The Strategy of Conflict
1960年刊
Thomas C. Schelling著
著者の経歴
トーマス・シェリング(1921-2016年)は1921年、米国カリフォルニア州オークランドに生まれた経済学者・戦略研究者である。カリフォルニア大学バークレー校を卒業後、ハーバード大学で経済学博士号を取得した。戦後のマーシャル・プラン関連業務や米政府での勤務を経て、イェール大学、ハーバード大学などで教鞭を執った。冷戦期には核抑止、軍備管理、外交交渉をゲーム理論によって研究し、米国の安全保障政策にも影響を与えた。本書は代表作である。2005年、対立と協力に関するゲーム理論研究によってノーベル経済学賞を受賞した。
本書の内容
1.戦略とは何か
シェリングは本書の冒頭で、従来の軍事戦略や国際政治の研究が、相手を打ち負かす方法に偏りすぎていたと指摘する。戦争では敵の軍事力を破壊し、領土を占領することが重要とされ、外交交渉でも自国の利益を最大化することが目標とされてきた。しかし現実の国際関係では、対立する国家同士であっても、完全に利害が対立している訳ではない。例えば米国とソ連は冷戦期に世界的な覇権を争っていたが、核戦争によって双方が壊滅的な被害を受けることは避けたいという共通利益を持っていた。したがって、戦略とは単に相手に勝つための技術ではなく、対立と協力が同時に存在する状況で、相手の判断に影響を与え、自分にとって望ましい結果を実現するための方法である。シェリングは、戦略的な行動を理解するには、自分が何を選ぶかだけでなく、相手が自分の行動をどう予測し、それにどう反応するかを考えなければならないと論じる。ここから、戦略とは相互に依存する意思決定の問題であるという、本書全体の基本的な考え方が導かれる。
2.対立と協力
従来のゲーム理論では、一方の利益が他方の損失となるゼロサムゲームが重要な研究対象とされてきた。しかしシェリングは、現実の外交交渉や軍事的対立の多くは、双方の利益が完全には対立しない非ゼロサムゲームであると考える。例えば、二つの国家が領土をめぐって争っている場合、どちらが領土を支配するかについては対立していても、全面戦争を避けることについては共通利益が存在する。また、企業同士が価格や市場占有率を争う場合でも、双方が破滅するような価格競争を避けたいという共通利益を持つ。シェリングは、こうした状況では、相手を完全に打ち負かすことよりも、対立する利益と共通する利益を正確に見極めることが重要だと論じる。相手の利益を全て否定する戦略は、相手に妥協する理由を失わせ、結果として自分にも不利益をもたらす。戦略的な交渉では、相手が受け入れられる結果を残しながら、自分の目的を達成する方法を探る必要がある。
3.交渉力の逆説
本書の重要な発見の一つが、交渉では選択肢が多いことが必ずしも有利とは限らないという逆説である。通常、人間は多くの選択肢を持つほど有利だと考える。しかし、交渉においては、自分の選択肢をあえて制限することで、相手に譲歩を迫ることができる。例えば、ある企業が労働組合との賃金交渉で、これ以上の賃上げは絶対にできないと主張する場合、その主張が単なる駆け引きだと相手に見抜かれれば、交渉力は弱くなる。しかし、企業側が事前に明確な予算制約や決定手続きを設け、それ以上の譲歩が本当に困難な状態を作れば、相手はその制約を考慮せざるを得なくなる。国家間の交渉でも、政府が国内法や議会の承認などによって自らの行動を制約している場合、その制約が交渉上の強みになることがある。シェリングは、自由に譲歩できる者よりも、譲歩できないことを相手に信じさせられる者の方が有利になる場合がある。ただし、その制約が強すぎれば、必要な妥協まで不可能になる危険もある。
4.約束と信用
交渉を成立させるためには、相手に何らかの約束をする必要がある。しかし、約束は相手がそれを信じなければ意味を持たない。例えば、国家が軍縮協定に合意しても、相手国が約束を破ると考えれば、自国も軍備を削減しようとはしない。企業間の契約でも、相手が将来の義務を履行しないと考えれば、協力関係は成立しない。約束の信頼性を高めるためには、単に誠実な意思を表明するだけでは不十分であり、約束を破ることが自分にとって不利益となる仕組を作る必要がある。例えば、契約違反に対する罰則、第三者による監視、段階的な履行、担保の提供などは、約束を守る動機を強める制度となる。国家間の軍備管理でも、相互査察や検証制度を設けることによって、相手が約束を守る可能性を高められる。シェリングは、信用とは個人や国家の善意だけによって成立するものではなく、約束を守ることが合理的になる制度によって支えられるのである。
5.脅迫の条件
脅迫が交渉において有効に働くためには、相手がその脅迫を実行可能であり、かつ実際に実行される可能性があると信じなければならない。例えば、ある国家が敵国に対して、特定の行動を取れば軍事的な報復を行うと警告しても、その報復が自国にも壊滅的な被害をもたらすなら、相手は本当に実行されるのか疑問を持つ。脅迫する側にとっても、相手が警告を無視した場合に、自らの脅迫を実行することが合理的とは限らない。ここに、抑止戦略の難しさが存在する。脅迫の信頼性を高めるためには、報復の準備を明確に示したり、事前に一定の行動を約束したりする方法がある。しかし、脅迫が強すぎれば相手を追い詰め、妥協する余地を失わせる危険もある。したがって、有効な脅迫には、相手に要求を理解させる明確さと、要求に従えば不利益を避けられるという選択肢の両方が必要になる。脅迫とは、相手を恐怖に陥れること自体ではなく、相手の行動を変えるための条件付きの働きかけである。
6.暗黙の協調
シェリングが本書で示した独創的な概念の一つが、明示的な連絡がなくても人々が協調できるという暗黙の協調である。例えば、二人の人間がニューヨークで待ち合わせることになったが、場所も時間も決めておらず、連絡も取れないとする。この場合、二人は無数の場所と時間の中から選ばなければならない。しかし、多くの人々はグランド・セントラル駅のような有名な場所や、正午のような分かりやすい時間を選ぶ。これは、その場所や時間が客観的に最も優れているからではなく、相手も同じことを考えるだろうと予測できるからである。シェリングは、このように人々が共通の認識によって自然に選びやすくなる地点を、後にシェリング・ポイントと呼ばれる。国際政治でも、国境線、既存の条約、歴史的な慣習などが、明確な交渉がなくても双方の行動を調整する基準になることがある。戦略的な協調には、正式な契約や命令だけでなく、人々が共有する期待や慣習が重要な役割を果たしている。
7.焦点の重要性
シェリングは、交渉の結果が必ずしも客観的に最も合理的な配分によって決まる訳ではないと考える。例えば、二つの企業が共同事業の利益を分配する場合、理論上は無数の配分方法が存在する。しかし、特別な事情がなければ、双方が半分ずつ受け取るという配分が自然な基準になりやすい。これは、50対50という数字が常に経済的に最適だからではなく、双方が公平だと認識しやすく、相手もその数字を想定すると予測できるからである。国家間の領土交渉でも、河川や山脈、既存の行政境界などが合意の基準となることがある。こうした焦点が交渉の複雑さを減らし、双方が同じ結果を選びやすくする役割を持つ。重要なのは、焦点が物理的な特徴だけでなく、歴史、文化、制度、慣習などによって形成されることである。交渉を成功させるためには、自分にとって合理的な案を提示するだけでなく、相手にとっても自然で受け入れやすい基準を見つけることが重要になる。
8.戦略的な行動
シェリングは、交渉において相手の行動を変えるために、自分自身の行動を事前に制約したり、状況を変化させたりすることを戦略的な行動として分析する。例えば、ある国家が特定の地域を防衛する意思を示すために、そこへ部隊を駐留させる場合、その行動は単に軍事力を増強するだけでなく、相手国に対して防衛への関与を明確にする意味を持つ。もし相手国が攻撃すれば、駐留部隊との衝突が発生し、より大きな戦争へ発展する可能性があるため、攻撃を思いとどまるかもしれない。こうした部隊は、敵の攻撃を物理的に阻止する力だけでなく、衝突の危険を通じて抑止力を生み出す役割を持つ。戦略的な行動の効果は、その行動の直接的な結果だけでなく、相手が将来の展開をどう予測するかによって決まる。ただし、相手が意図を誤解したり、偶発的な衝突が起こったりすれば、抑止を目的とした行動が逆に危機を深める可能性もある。戦略には、相手の認識を変える力と、予期しない結果を生む危険が同時に存在する。
9.交渉と限定戦争
シェリングは、戦争を外交交渉の完全な失敗として捉えるのではなく、戦争の最中にも交渉が続いている場合があると考える。特に限定戦争では、双方が軍事行動を行いながらも、戦争を全面的な破壊へ拡大させないための暗黙の了解を形成することがある。例えば、戦闘地域を限定する、特定の兵器を使用しない、敵国の本土への攻撃を控えるといった行動は、明示的な協定がなくても、相手に一定の意思を伝える手段となる。双方は軍事力を行使しながら、どこまでなら相手が耐えられるか、どの行動が戦争の拡大を招くかを探り合う。シェリングは、こうした状況を、戦闘と交渉が同時に進行する過程として分析する。軍事行動は敵の能力を破壊するだけでなく、自国の決意や要求を伝える信号としても機能する。しかし、信号が誤解された場合には、双方が望まない戦争拡大が起こる危険がある。限定戦争を理解するためには、軍事力の大きさだけでなく、双方が互いの行動をどう解釈しているかを考える必要がある。
10.偶然性の利用
本書の重要な特徴は、戦略的な行動における偶然性や不確実性の役割を詳しく分析したことである。通常、合理的な戦略とは、結果をできる限り予測し、偶然による失敗を避けることだと考えられる。しかし、交渉においては、結果が完全には予測できないことが、かえって相手への圧力になる場合がある。例えば、ある国家が軍事的な危機を高める行動を取った場合、全面戦争を意図していなくても、偶発的な衝突や誤認によって戦争が発生する可能性が生まれる。相手国は、その危険を避けるために譲歩を検討するかもしれない。ここで重要なのは、脅迫する側が必ず戦争を開始すると約束することではなく、双方が望まない戦争が発生する危険を高めることである。シェリングは、このような不確実性を交渉の要素として利用する戦略を分析した。しかし、この方法は危険を完全に管理できることを意味しない。偶然性を利用する戦略では、実際に破局が発生する可能性を受け入れなければならず、交渉上の利益と破滅的な危険が表裏一体となる。
11.瀬戸際政策
シェリングが特に有名にした概念が、ブリンクマンシップ(瀬戸際政策)である。これは、相手を譲歩させるために、双方が望まない破局へ向かう危険を意図的に高める戦略である。例えば、核兵器を保有する二つの国家が対立した場合、どちらも全面核戦争を望んでいなくても、軍事的な警戒態勢を引き上げたり、部隊を前進させたりすることによって、偶発的な衝突の可能性が高まる。相手は、その危険が受け入れられないと判断すれば、要求を一部受け入れるかもしれない。瀬戸際政策の本質が、破局を確実に起こすという脅迫ではなく、破局が起こる可能性を双方が無視できない状態にすることである。しかし、ここには重大な矛盾が存在する。危険を完全に管理できるなら相手への圧力は弱まり、管理できないなら本当に破局が起こる可能性がある。したがって、瀬戸際政策は合理的な交渉手段として分析できる一方、極めて危険な戦略でもある。シェリングは、その危険性を理解することが核時代の外交に不可欠だと考えた。
12.核抑止の論理
シェリングは、核兵器の存在によって軍事戦略の基本的な意味が変化したと考える。通常の戦争では、敵の軍事力を破壊し、自国の軍事的な優位を確立することが重要になる。しかし核兵器を保有する国家同士では、全面戦争が双方に壊滅的な被害をもたらす可能性があるため、軍事的な勝利が意味を失いかねない。そこで重要になるのは、核兵器を実際に使用する能力だけでなく、その使用の可能性を相手に認識させ、攻撃を思いとどまらせることである。抑止とは相手に対して、ある行動を取れば受け入れがたい損害が発生すると信じさせる仕組である。核兵器の数や破壊力だけでなく、報復能力が残存するかどうか、報復の意思が信頼されるかどうか、相手が警告を理解しているかどうかが重要になる。核抑止の目的は核戦争に勝利することではなく、核戦争を起こさせないことである。シェリングは、軍事力を実際に使用することと、軍事力を使用する可能性によって相手の行動を変えることを区別し、後者の重要性を明らかにした。
13.奇襲攻撃の恐怖
シェリングは、核兵器を保有する国家同士が、互いに先制攻撃を恐れることによって、かえって戦争の危険が高まる可能性を指摘する。例えば、二つの国家が対立している場合、双方とも戦争を望んでいなくても、相手が先に攻撃して自国の核戦力を破壊するのではないかと恐れることがある。その結果、攻撃される前に自分から攻撃した方が有利だと判断する可能性が生まれる。相手も同じことを考えていれば、双方が防衛を目的として行動しているにもかかわらず、先制攻撃への圧力が強まる。シェリングは、この状況を相互不信による戦略的な不安定性として分析する。重要なのは、実際に相手が攻撃を計画しているかどうかではなく、相手が攻撃するかもしれないという予測が、自国の行動を変えてしまうことである。こうした危険を減らすためには、相手の先制攻撃によって全ての報復能力を失うような脆弱な軍事態勢を避けることが重要になる。双方が奇襲攻撃を受けても反撃できる能力を持つなら、先制攻撃によって決定的な優位を得る動機は弱まり、危機の安定性が高まるのである。
14.軍縮の逆説
シェリングは、軍備を削減すれば必ず戦争の危険が減るとは限らないという逆説も示している。一般に、兵器の数が少なくなれば軍事的な緊張は緩和されると考えられる。しかし、軍縮の方法によっては、相手の奇襲攻撃によって自国の戦力が壊滅する危険が高まる場合がある。例えば、核戦力の規模を削減した結果、少数の基地に兵器が集中すれば、敵の先制攻撃によって報復能力を失う可能性が高まる。その場合、危機が発生すると、攻撃される前に自分から攻撃しようとする圧力が強まるかもしれない。シェリングは、軍縮の目的を単に兵器の数を減らすことに限定せず、双方が先制攻撃によって利益を得られない安定した状態を作ることに置くべきだと考える。そのためには、報復能力の残存性、兵器の配置、警戒態勢、相互の情報などを総合的に検討する必要がある。軍縮は平和を実現する重要な手段となりうるが、その制度設計を誤れば、かえって軍事的な不安定性を生む危険がある。
15.意思疎通の役割
シェリングは、国家間の対立において、相手との意思疎通が極めて重要であると考える。敵対する国家同士では、相手の行動を疑い、軍事的な動きを攻撃の準備として解釈しやすい。しかし、実際には相手が防衛目的で行動している場合もあり、誤解が連鎖することで双方が望まない戦争へ進む危険がある。戦略的な交渉では、自国の要求や警告を相手に理解させるだけでなく、相手がどのような行動を取れば危機を回避できるかを明確にする必要がある。また、正式な外交交渉が行われていない場合でも、軍事行動の範囲を限定したり、特定の行動を控えたりすることで、暗黙の意思を伝えることができる。敵対する国家との対話は弱さの表れではなく、戦争の危険を管理するための重要な手段である。ただし、意思疎通が常に成功するとは限らず、相手が警告を誤解したり、意図的な欺瞞を疑ったりする場合もある。シェリングは、戦略の成功が軍事力の大きさだけでなく、相手との認識の共有に大きく依存すると考えた。
16.信頼と相互不信
シェリングは、国家間の協力を妨げる最大の問題の一つが、相互不信であると考える。二つの国家が軍備を削減すれば双方に利益がある場合でも、相手が約束を守るかどうかを疑えば、軍縮は実現しない。双方が協力を望んでいても、相手が裏切る可能性を恐れるために、自国も協力を拒むという状況が生まれる。シェリングは、この問題を、相手の行動を予測しながら自分の行動を決定する戦略的な相互依存の問題として捉える。信頼を築くためには、単に相手を信用するよう呼びかけるだけでは不十分であり、約束を守ることが双方にとって合理的になる制度を整える必要がある。例えば、段階的な軍縮、相互査察、違反を発見する仕組、合意を破った場合の不利益などは、協力を維持するための条件となる。シェリングは、国家間の信頼を道徳的な善意だけに依存させず、互いの利益と行動を結びつける制度によって支えるべきだと考える。ここには、対立する国家同士であっても、適切な制度設計によって協力関係を築くことができるという重要な可能性が示されている。
17.戦略の限界
シェリングは、ゲーム理論によって全ての国際紛争を正確に予測できると考えていた訳ではない。現実の国家や人間は、完全な情報を持っている訳ではなく、常に合理的に行動するとも限らない。指導者は国内政治、世論、感情、誤った情報などの影響を受ける。また、相手の意思や能力を正確に理解することは難しく、同じ行動でも異なる意味に解釈されることがある。シェリングは、ゲーム理論を現実の行動を機械的に予測する道具としてではなく、複雑な対立の中に存在する重要な構造を明らかにする方法として用いた。例えば、双方が戦争を望んでいなくても戦争が起こる可能性や、選択肢を減らすことで交渉力が高まる場合があることなどは、通常の直感だけでは理解しにくい。ゲーム理論は、こうした逆説を明らかにし、政策決定者が自分の行動の結果をより慎重に考えるための道具となる。戦略的な分析の価値は、未来を完全に予測することではなく、誤った判断によって破局へ進む危険を減らすことにある。
18.戦争を防ぐ戦略
本書全体を通してシェリングが示した最も重要な考え方は、軍事力の目的が敵を破壊することだけではなく、敵の行動を変えることにもあるという点である。核兵器の時代には、全面戦争によって勝利を得ようとする発想そのものが危険であり、相手に攻撃を思いとどまらせ、危機を管理し、妥協の余地を残すことが重要になる。シェリングは、軍事的な脅迫や瀬戸際政策を分析したが、それらを無条件に推奨した訳ではない。むしろ、相手の反応を誤って予測した場合には、双方が望まない戦争が発生する危険があることを繰り返し指摘している。彼にとって優れた戦略とは、相手を屈服させることだけを目指すものではなく、対立する利益と共通する利益を見極め、双方が破局を避けられる行動の仕組を作ることである。国家間の対立は完全にはなくならないが、その対立を戦争へ発展させず、交渉と抑止によって管理することは可能である。これが、シェリングがゲーム理論を通じて国際政治に示した最も重要な思想である。
本書が言いたかったこと
戦略の目的は相手を打ち負かすことではなく、相手の判断と行動を変え、自分にとって望ましい結果を実現することである。国家間の対立では、軍事力の大きさだけでなく、脅迫の信頼性、約束の履行、相手の認識、交渉の仕組が重要になる。シェリングは、強い立場が必ずしも交渉上有利とは限らず、自らの選択肢を制限することで交渉力が高まる場合があることを示した。また、敵対する国家同士でも、全面戦争を避けたいという共通利益が存在し、その利益を利用することで協力や妥協が可能になる。核兵器の時代には、戦争に勝つ能力以上に、戦争を起こさせない能力が重要となる。優れた戦略とは、相手を破壊する力を持つことだけではなく、対立を管理し、双方が破局を避けられる条件を作り出すことなのである。
