産業政策提言の骨子
今後の日本は、米国や中国のように世界覇権を目指す国と競争する国家を目指すべきではない。むしろ、日本が存在しなければ世界経済や先端産業が成り立たない「不可欠な基盤国家」を目指すべきである。半導体材料、精密機械、ロボット、量子通信、水資源など、日本が優位性を持つ分野に経営資源を集中し、世界の産業構造の要所を押さえることが肝要である。
AI国家戦略(日本独自のAI主権確立)
人工知能は21世紀最大の基盤技術であり、日本も独自のAI戦略を持たなければならない。生成AIの競争では米国企業が先行しているが、日本には日本語、日本企業、日本法制、行政などに特化した独自AIを構築する余地がある。日本が目指すべきは海外AIへの全面依存ではなく、必要な技術は当面は活用しながらも国内に重要な知的基盤を保持することである。AIを電力や通信と同様の国家インフラとして位置付けるべきである。
物理AI革命への挑戦 (日本最大の勝機)
日本が世界で主導権を握れる可能性が最も高い分野が物理AIである。物理AIとはロボット、自動運転車、ドローン、工場設備など、現実世界を動かすAIを意味する。日本はロボット工学、精密機械、センサー技術、工作機械、自動車産業において世界最高水準の技術を保有している。今後はこれらの強みとAIを融合させ、製造業、防災、物流、介護、インフラ管理などの分野で世界標準を確立すべきである。物理AIは日本が米中に対して対等以上に戦える数少ない戦略分野であり、国家プロジェクトとして推進する必要がある。
安全保障としてのAI(暗号の強化)
AIやロボットが社会の基盤となる時代には、安全性の確保が不可欠となる。ロボットへの命令が正当なものであるか、センサー情報が改ざんされていないか、AIモデルが盗まれていないかを保証する仕組が求められる。日本は高度な暗号技術、認証技術を物理AIに組み込み、世界で最も安全なAI国家を目指すべきである。単なるAI開発競争ではなく、安全性と信頼性を競争力とする国家戦略が必要である。
半導体戦略(世界の基盤技術を握る)
半導体産業では、最先端ロジック半導体の量産競争だけを追うのではなく、半導体材料、製造装置、特殊化学材料を今後とも強化し、世界の半導体産業が日本なしでは成立しない体制を不動のものとして築くべきである。
更には物理AIや産業用ロボットに特化した高信頼性半導体分野を強化すべきである。自動車、ロボット、ドローン、産業機械などは、高速演算だけでなく、低消費電力、高信頼性、耐熱性、耐振動性、長寿命性が求められる。これはまさに日本の得意分野である。今後は、物理AI用半導体チップを国家戦略として開発し、日本を物理AI時代の半導体大国へ育成すべきである。
量子技術と次世代通信
量子コンピュータは計算能力を飛躍的に向上させる一方、量子通信や量子暗号は次世代の情報安全保障を支える技術となる。日本は量子コンピュータだけでなく、光通信技術、量子暗号通信などを統合し、量子時代の社会インフラを構築するべきである。未来の通信と情報処理の標準を握ることは、日本の国際競争力を左右する重要な課題である。
水資源国家戦略(21世紀の青い石油)
水処理産業は21世紀における戦略産業である。浄水技術、海水淡水化、水循環システム、漏水管理技術などを強化し、世界の水問題解決に不可欠な国家を目指すべきである。水処理産業は日本の安全保障とエネルギー政策と表裏一体として推進すべき産業である。
食料安全保障と農業輸出国家への転換
食料は国家安全保障そのものである。日本は海外調達網を強化すると同時に、高品質農産物、植物工場、スマート農業技術を世界へ輸出する国家を目指すべきである。食品産業では単なる食品輸出ではなく、安全性、高品質、発酵技術、冷凍保存技術、スマート農業技術を組み合わせた食料システム全体を輸出する視点が重要である。
