話す写真―見えないものに向かって

話す写真―見えないものに向かって
2010年刊
畠山直哉著

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写真家の経歴

畠山直哉は1958年岩手県生まれの写真家である。筑波大学大学院芸術研究科を修了後、写真を通じて都市と自然の関係を主題に制作を続けてきた。石灰岩の採掘場と都市の関係を捉えたLIME WORKSで木村伊兵衛写真賞を受賞し、その後もBLAST、Undergroundなどのシリーズで、物質・構造・時間の視点から都市を再解釈してきた。国際的にも高く評価され、ヴェネツィア・ビエンナーレにも参加するなど、日本を代表する現代写真家の一人である。

畠山直哉
畠山直哉
Underground

本書の内容

本書は、畠山直哉が各地で行った講義や講演、対話をもとに構成された写真論集である。単なる作品解説ではなく、写真とは何かという根本的な問いに対して、歴史・科学・哲学を横断しながら思考を展開している。写真の誕生史から始まり、光学や化学的原理、現代におけるデジタル化までを視野に入れながら、写真というメディアの特質が丁寧に解き明かされる。同時に、自身の作品制作の背景や具体的な撮影経験も語られ、理論と実践が密接に結びついた構成となっている。

写真は見えないものを可視化する装置

畠山は、写真とは見えないものに向かう装置であるという認識である。写真は単に目の前の風景を記録するものではなく、人間の視覚では捉えきれない時間や構造、関係性を浮かび上がらせる媒体である。彼の代表作である採石場の爆破の瞬間は、一見すると劇的な光景であるが、その背後には都市を支える素材の循環や、人間の営みと自然の関係が潜んでいる。地下空間を撮影した作品では、普段は意識されないインフラの存在が、都市の不可視の基盤として提示される。このように写真は、表面に現れているものの背後にある構造や時間を可視化する力を持つ。畠山にとって写真の魅力とは、まさにその見えないものを見せる力にある。

畠山直哉
Terrils
畠山直哉
奥尻

思考と世界観

畠山直哉の思考には、世界は目に見えるものだけでは成立していないという確信がある。都市は単なる建築物の集合ではなく、地中の資源、流通するエネルギー、時間の堆積によって支えられている。彼は、こうした見えない層に光を当てる。写真とは現実の表層をなぞるのではなく、その背後にある関係性を読み解く行為である。彼は、写真を客観的記録としてではなく、世界との関係を結び直す手段として捉える。撮影とは対象を支配する行為ではなく、むしろ対象との関係の中で自らの位置を確認する行為である。この姿勢が、彼の作品に独特の静けさと深度を与えている。

未来の輪郭

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