競合は必然
ベンチャー企業が新しい価値を社会に届け、世の中に浸透し始めると、必然的に競合が現れる。これは成功の証であると同時に、次のステージに進むための試練でもある。競合は脅威ではなく、成長の触媒である。競合が現れた時こそ、自らの核を強くし、ブランドを深くし、さらに遠くへ踏み込むべきタイミングなのだ。
価格競争の回避
まず、競合出現に対処する際に最も警戒すべきは、価格競争に巻き込まれ、自社の価値を自ら切り下げてしまうことだ。価格競争は大手企業に有利であり、資本力の差がそのまま体力差となる。ベンチャーが生き残るためには値段ではなく価値で勝負する姿勢が必要である。ユーザーが企業を選ぶ理由は価格だけではない。
差別化
競合が増えた時、最も確かな戦略は差別化である。ベンチャーは意思決定が速く、小回りが利く。その強みを最大限に活かし、改善と実験を反復すれば、資本力よりも機動力が勝る局面は多い。むしろ競合の動きを観察し、彼らを市場リサーチの一部と捉える位の視点が望ましい。競合は何を真似し、何を諦め、どのユーザー層を狙おうとしているのか。その動きから市場構造の変化を読み取り、自社が向かうべき方向を数歩先んじて選ぶことで優位は保たれる。
競合は成長の証
競合の登場は、自社が市場にインパクトを与えているという明確な証拠である。この事実を恐れではなく誇りに変えることが大切である。大手が参入するということは、市場に未来があり、市場規模が拡大しつつあるということだ。もし大手が参入してきたなら、彼らは市場拡大を代わりに担ってくれる好機であると認識すべきである。ベンチャーは新しい価値の伝道師として先行者利益を保持しつつ、より深く、より鋭く、顧客の生活に入り込むことで強固なポジションを築くことができる。大手にはできないことが必ずある。それは顧客の声に一番近い位置で、顧客と並走することである。
競合を超えて
最後に、競合と対峙する最も強い戦略は、顧客に愛され続けることである。模倣は機能を真似できても、文化は奪えない。顧客の期待を超え続ける企業は、競争ではなく支持によって生き残る。製品を磨き、顧客と対話し、ブランドの信頼を積み重ねる。その地道な積み重ねこそが、競争の波を超えて企業を未来へ連れていく。
