アッサンブラージュの芸術

The Art of Assemblage
1961年刊
William C. Seitz著

著者の経歴

ウィリアム・C・サイツ(1914-1974年)はアメリカの美術史家・キュレーターである。1955年にプリンストン大学で近代美術を主題とする博士号を取得した。1960年代にはMoMAのキュレーターとして活動し、The Art of Assemblageのほか、オプ・アートを扱ったThe Responsive Eyeなど重要な展覧会を企画した。また、抽象表現主義についての早い時期の重要な研究でも知られる。

本書の内容

1.アッサンブラージュという概念の確立

本書は、アッサンブラージュという言葉を単なる技法名ではなく、20世紀美術を理解するための大きな概念として提示した。アッサンブラージュとは、絵具で描くのではなく、既製品、廃材、紙片、写真、文字、日用品、機械部品などを組み合わせ、物を芸術の構成要素とする表現である。サイツは、この表現がキュビスム、未来派、ダダ、シュルレアリスム、ネオ・ダダへと連なる近代美術の重要な流れであることを示した。

2.言葉の解放

本書の構成には言葉の解放という章があり、サイツは、アッサンブラージュの出発点を美術作品だけに限定せず、詩や文学における文字配置、断片性、偶然性、視覚的構成にも求めている。アッサンブラージュは物の組み合わせである以前に、近代における意味の組み替えの運動であった。

3.物の解放

続く中心的な章では、ピカソ、ブラック、グリスらのキュビスム的コラージュ、未来派、ダダ、シュルレアリスムが論じられる。ここで重要なのは、新聞紙、壁紙、木片、金属、日用品など、従来は美術の外部にあった物が作品の内部へ入り込んだことである。特にデュシャンのレディメイドやシュヴィッタースのメルツ作品は、芸術が手仕事による美しい造形だけではなく、選択、配置、関係づけによって成立することを示した。

4.コラージュから環境へ

本書は、紙面上のコラージュから、立体的なオブジェ、更に空間全体を構成する環境芸術へと視野を広げている。アッサンブラージュは、小さな箱や壁面作品にとどまらず、鑑賞者を取り囲む空間を変える表現へ発展する。ここには、後のインスタレーション・アートにつながる重要な萌芽がある。

5.現実と詩の結合

サイツは、アッサンブラージュを単なる廃物利用とは見なしていない。日用品や廃材は、現実そのものの断片である。しかし、それらが新しい関係の中に置かれると、現実は詩的な意味を帯び始める。コーネルの箱作品、デュシャンのレディメイド、シュヴィッタース、ラウシェンバーグらの作品は、物が本来の用途を離れ、記憶、ユーモア、批評、夢、偶然を帯びる。

6.態度と問題

本書の後半では、アッサンブラージュが美術制度に突きつけた問題が論じられる。何が芸術作品なのか、作家はどこまで手を加えるべきなのか、既製品を選ぶだけで芸術になるのか、偶然や廃棄物は美術館に入ることができるのか。これらの問いは、二十世紀後半の現代美術を方向づける根本問題であった。本書は、その問題を整理し、アッサンブラージュを近代美術の周辺ではなく中心に置いた。

本書が言いたかったこと

20世紀美術の革新は、描き方の変化だけではなく、物を見る方法の変化にあった。芸術はもはや絵具や大理石だけで作られるものではなく、新聞紙、廃材、機械部品、古写真、日用品といった現実の断片からも成立する。アッサンブラージュは、物を組み合わせる技法であると同時に、世界を再構成する思想である。サイツは、近代美術が物を解放し、意味を解体し、現実と詩を結び直した過程を明らかにした。

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