Modigliani A Life
2011年
Meryle Secrest 著
著者とモディリアーニの経歴
メリル・シークレスト(Meryle Secrest)は、20世紀の芸術家や文化人の伝記で知られるアメリカの作家である。緻密な史料調査と心理的洞察に定評がある。単なる年譜的叙述にとどまらず、人物の内面や時代背景を重層的に描き出す。
モディリアーニは1884年、イタリアのリヴォルノに生まれた。幼少期から結核に苦しみ、病弱な体質を抱えながら成長する。青年期にパリへ移り、エコール・ド・パリの一員として活動するが、貧困と放蕩生活に苦しみ続ける。彫刻から絵画に転じ、独自の様式を確立するが、生前にはほとんど評価されることなく、36歳の若さで死去する。彼の死の直後、恋人であったジャンヌ・エビュテルヌ(Jeanne Hébuterne)も後を追うように命を絶ってしまう。
本書の内容
本書は、モディリアーニの生涯を時間軸に沿って丹念に追いながら、彼の芸術がどのような条件のもとで形成されたかを描き出す。彼の人生を病・貧困・愛という三つの要素の交錯として捉えている。幼少期からの結核は彼の身体を蝕み続け、その影響は精神にも及んだ。パリにおいては、酒や薬物に依存しながらも創作に没頭し、常に極限状態の中で生きていた。経済的には慢性的な困窮状態にあり、絵を描いてもほとんど売れず、生活は破綻寸前であった。そのような中で出会ったのがジャンヌ・エビュテルヌであるが、彼女との出会いによって、モディリアーニは一時的ではあるが精神的な安定を得て、創作に没頭した。本書は、この時期に彼の作品が最も成熟したことを丁寧に描き出している。
有限な生と愛の静けさ
本書において著者は、モディリアーニの芸術が有限な生の意識と深く結びついていることを強調している。彼は常に病を抱え、死の影とともに生きていた。そのため彼の作品には、激しさや劇的な動きよりも、むしろ静けさと内面性が際立つ。人物は細長く引き伸ばされ、目は虚ろに、あるいは閉ざされ、現実の時間から切り離されたように描かれる。これは単なる様式ではない。生の短さを知る者のまなざしである。ジャンヌとの関係についても、著者は単なる恋愛としてではなく、芸術の完成と不可分のものとして捉える。ジャンヌの肖像に見られる静謐さ、柔らかな線、深い内面性は、それ以前の作品とは明らかに異なり、愛が表現を純化させている。放蕩と混乱の中にあった画家が、愛によって一瞬の均衡を得、その中で最も純粋な表現に到達した。
病・貧困・愛が生んだ芸術の魅力
モディリアーニの芸術は三つの力の交錯によって成立している。病は、彼に常に死の意識を与え、作品は現実の瞬間ではなく、永遠性を帯びた存在として人物を描く方向へ向かった。貧困は、彼を社会の周縁へと追いやり、同時に他者の評価に依存しない独自の様式を貫かせた。評価されないことが、かえって純粋な表現を可能にした。そして愛は、混乱した生の中に一時的な秩序を与え、その中で作品は最も静かで深い調和を獲得した。そのため彼の作品には、痛みと安らぎ、孤独と親密さ、生と死が同時に宿っている。その複雑な感情の層こそが、今日に至るまで人々を惹きつける根源的な魅力となっている。
私のモディリアーニ(付記)
たとえ病と貧困に苦しめられようとも、モディリアーニの作品を模写していると愛の喜びを感じずにはいられない、

國井正人作







