ベンチャーキャピタルの産業構造

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ベンチャーキャピタルの市場規模

2024年における世界全体のベンチャーキャピタル(以下VC)投資額は約3,300〜3,800億ドル(円換算で約45〜50兆円)規模と推定されており、主に米国を中心に、欧州、中国がこれに続く構造となっている。とりわけ近年はAI分野への投資が再び活発化している。世界のVC市場は単なるスタートアップ投資の枠を超え、国家の技術競争力や産業覇権を左右する戦略的資本としての性格を強めている。

一方、日本のVC市場は、世界と比較すると規模は依然として小さい。2024年度における日本国内VCによる年間投資額は約3,500億円前後(国内2,436億円+海外1,108億円)にとどまる。これは世界全体のVC投資額の1%にも満たない水準であり、日本経済の規模から見ても、VC市場の相対的な小ささは顕著であるが、日本市場には成長余地も大きい。政府はスタートアップ育成を国家戦略に位置づけ、今後5〜10年で官民合わせて大規模な資金供給を行う方針を打ち出している。これにより、VC投資額の拡大、ファンドの大型化、大学・研究機関発スタートアップの増加が進むと予想される。日本のVC市場は現在の小規模な市場から、戦略分野に集中投資する質の高い市場へと転換すると予想される。

国別市場規模

1. 米国
世界最大のVC市場。
2024年の投資額は約1,560億ドルと推定される。
総VC投資額の約45〜50%を占める。

2. イスラエル
世界2位のVC投資国。
約65億ドル程度。

3. 中国
VC投資規模は未公表だが世界上位に位置する。

4. 英国
欧州最大クラス。
欧州のVC拠点として主要な位置を占める。

5.インド
投資額は約330億ドル規模に達する。
アジアの有力成長市場として存在感を増している。

6.日本
世界主要国に比べると規模が小さいものの、政策支援と市場成熟により成長余地が大きい。

近未来予測(5年・10年の予測)

【世界のVC予測】

世界のVC投資は、今後5年および10年という時間軸で見ると、成長の重心が明確に分かれながら拡大していくと予想されている。短中期では既存の巨大市場が成長を牽引し、長期では人口構造と産業構造の変化を背景に、新興地域が台頭するという二層構造が特徴である。

今後5年(〜2030年)の視点では、引き続き米国が世界のVC投資成長の中心となる見通しである。AI、生成AI、クラウド、ヘルステックといった分野では、すでに巨大なエコシステムと資本回収(IPO・M&A)の仕組みが整っており、大型投資が連続的に生まれやすい。世界全体のVC投資額の中で、米国が占める比率は今後も最も高い水準を維持し、金額ベースでの成長も最大になる可能性が高い。

これに次ぐ存在として、中国は今後5年でも依然として大規模市場を維持すると見られる。AI、ロボティクス、ハードウェア分野を中心に内需主導型の投資は続くが、政策・規制の影響を受けやすく、成長のスピードや方向性は年ごとに振れやすい。規模は大きいが、安定成長というよりは政策依存型の変動成長となる可能性が高い。

一方で、今後5年で最も注目される成長市場の一つがインドである。若年人口の多さ、急速なデジタル化、国内VC資本の増加を背景に、シードからグロースまで幅広いステージで投資が拡大すると見込まれている。特にSaaS(インターネット経由のソフトウェア利用)、フィンテック、AI応用分野では、世界的な投資対象としての存在感が急速に高まると予想される。

加えて、東南アジアや中東諸国では、政府主導のスタートアップ育成政策と地域内資本の循環により、VC投資が着実に増加すると考えられている。欧州については、成長率では米国や新興国に及ばないものの、公的資本の関与が強まり、AIやクリーンテックなど特定分野に集中した形での拡大が見込まれる。

今後10年(〜2035年)という長期視点では、VC投資の地理的重心はより分散していくと考えられる。米国は引き続き世界最大のVC市場としての地位を維持する可能性が高いが、成長率という観点では相対的に落ち着き、成熟市場としての性格を強めていく。一方で、インドや東南アジアは人口増加と市場拡大を背景に、世界VC市場の中で占める比率を大きく高めていく可能性がある。

さらに長期では、アフリカや中東といったこれまで周縁的だった地域も、デジタルインフラの整備とモバイル経済の普及により、高い成長率を示す新興VC市場として台頭する可能性がある。投資額の絶対値は依然小さいものの、10年単位では無視できない存在になっていくと考えられる。

【日本のVC予測】

こうした世界的な潮流の中で、日本の位置づけはやや異なる。日本のVC市場は規模面では依然として世界主要国に比べて小さいが、今後5年では政府主導のスタートアップ育成政策やCVC(事業会社系VC)の拡大を背景に、着実な成長が見込まれる。特にシード・アーリーステージでは投資環境が改善し、大学発・研究開発型スタートアップを中心に案件数は増加すると予想される。

一方、10年という長期で見ると、日本のVC市場は量的拡大よりも質的転換が鍵となる。すなわち、世界規模のユニコーンを量産する市場というよりも、AI、ロボティクス、素材、医療、製造技術など日本が強みを持つ分野に集中した戦略的VC市場が発達するだろう。海外資本との連携や、レイターステージ(後期段階)資金の厚みが増せば、日本はアジアにおける技術特化型VCハブとして独自の存在感を持つ可能性がある。

投資スタイル別分類

VCとは単一の職業ではなく、どの段階で賭けるか、何に賭けるか(人か技術か数字か)、どこまで関与するか(伴走か距離か)という選択の集合体である。とりわけシード投資型VCは、すべてのVCの起点であり、ここが弱ければ後続の成長資本も育たない。スタートアップにとって重要なのは、資金額ではなく、自らのフェーズと思想に合致したVCを選ぶことであり、VCにとって重要なのは、自らがどの未来に賭ける存在なのかを自覚することである。

1.シード投資型VC

シード投資型VCは、事業が形になる前段階、場合によってはアイデアや創業者個人の段階で投資を行うことを主眼とする。売上やKPIは存在せず、評価軸は創業者の資質、問題設定の鋭さ、将来の非連続性に集約される。投資額は小さいが、リスクは高く、成功すればリターンは桁違いになる。このタイプのVCは、資金提供以上に最初の信任を与える存在である。会社の方向性、株主構成、カルチャー形成に極めて大きな影響を与える。失敗率が高いことを前提に、多数投資・少数成功のポートフォリオ設計を行う点が特徴である。エンジェル投資家とアーリーVCの中間に位置し、近年はマイクロVCとして独立するケースも多い。

2.創業者支援型VC

創業者支援型VCは、シード〜アーリー段階を中心に、創業者と深く伴走すること自体を価値とする投資スタイルである。戦略立案、採用、プロダクト設計、資金調達まで広く関与し、VCでありながら共同創業者に近い役割を果たす。投資判断は定量よりも定性を重視し、人間性・学習能力・逆境耐性などが評価軸となる。時間と労力を集中的に投下するため、投資社数は限定されるが、成功時のリターンは極めて大きい。人に賭けるVCの代表的スタイルである。

3.テーマ特化型VC

テーマ特化型VCは、AI、バイオ、量子、クリーンテック、宇宙、防衛など、特定分野に明確な投資テーマを持つ。市場規模よりも技術的ブレークスルーや産業構造の転換点を重視し、10年単位の視点で投資を行う。専門性が強力な武器となる一方、理解不足は致命的な損失につながる。成功した場合のリターンは非線形であり、少数の大当たりがファンド全体を押し上げる構造を持つ。忍耐力と思想の一貫性が求められるVCである。

4.スケール重視型VC

スケール重視型VCは、すでに勝ち筋が見えた企業を一気に拡大させることを目的とする。シリーズB以降が主戦場で、事業モデルやKPI(重要業績評価指標)、組織体制が整った企業に大規模な資本を投下する。リスクは比較的低く、1件あたりの投資額は大きい。IPOや大型M&Aを明確に出口として意識し、成長速度と資本効率を重視する。金融色の強い、プロフェッショナル資本としての性格を持つVCである。

5.金融リターン最大化型VC

このスタイルのVCは、純粋なリスク・リターンの最適化を目的とする。投資先への関与は限定的で、評価倍率、マクロ環境、出口条件を重視する。VCとPEの中間的存在として、レイターステージやクロスオーバー投資に強みを持つ。短中期での資本回転を重視するため、産業育成よりも投資としての効率性が最優先される。

6.戦略連携型VC

戦略連携型VCは、事業会社を背景に持ち、財務リターンと戦略的価値の両立を狙う。自社事業とのシナジー、技術獲得、将来のM&Aを視野に入れた投資が中心となる。販路・信用力・技術基盤といった強力な非金銭的リソースを提供できる点が特徴である

7.エコシステム構築型VC

このVCは、個社のリターンよりも産業・地域・人材の循環そのものを育てることを目的とする。大学発ベンチャー、研究機関、地域スタートアップと連携し、長期的な産業基盤の形成を担う。政府系ファンドや大学連携VCに多く、短期IRRは低いが、国家戦略や産業政策と密接に結びつく存在である。

8.起業家資本型VC

成功した起業家自身が設立・主導するVCで、実体験に基づく直感的判断が特徴である。形式的な審査よりもこの創業者は勝つかという感覚を重視し、言葉や人脈そのものが付加価値となる。ファンドというより、拡張された起業家ネットワークに近い存在である。

初期段階投資

世界のVC市場において、初期段階(シード、プレシード、シリーズA前後)の投資は、市場全体の中核を成す領域であり続けている。金額ベースでは、レイターステージに比べると低いものの、案件数ベースでは常に過半数を占めており、新たな技術・産業の芽が生まれる最前線である。2024年時点では、世界のVC投資額全体のうちおおむね3割程度が初期段階投資に充てられていると推定されている。

今後の世界市場におけるEarly Stage VC投資は、量・質ともに拡大する可能性が高い。その最大の理由は、AI、量子、バイオ、クリーンエネルギー、宇宙、防衛といった分野において、技術革新の源泉が初期フェーズに集中しているためである。特に生成AI以降の技術潮流では、少人数・短期間で世界的競争力を持つプロダクトが生まれやすくなり、従来よりも小規模な資本で高いオプション価値を生む案件が増えている。この結果、マイクロVC、テーマ特化型シードファンド、エンジェルとVCの中間的存在など、Early Stage専業の投資主体が世界的に増加している。

2025〜2030年にかけては、世界のEarly Stage VC投資額そのものも拡大し、年間1,000〜1,500億ドル規模へ成長する可能性が指摘されている。特に注目すべきは、投資額の増加以上に投資密度の上昇であり、技術的・人的クオリティの高い創業チームに資金が集中する傾向が強まっている。Early Stage市場は量的拡張と同時に、選別と高度化が進むフェーズに入ると考えられる。

一方、日本のVC市場における初期段階投資は、世界以上に重要な意味を持つ。日本では、VC投資全体に占めるEarly Stageの比率は金額ベースで5割前後と比較的高く、これはレイターステージ投資の層が薄いことの裏返しでもある。しかし近年は、大学発スタートアップ、研究開発型ベンチャー、AI・ディープテック分野を中心に、初期段階の案件数が着実に増加している。

今後の日本におけるEarly Stage VC市場拡大を支える最大の要因は、政策と制度の変化である。政府によるスタートアップ支援策は、スケールアップ以前の創業初期に重点を置く傾向を強めており、研究開発資金、実証支援、シードマネー供給が体系的に整備されつつある。これにより、従来は資金不足で消えていた技術シーズが、事業化フェーズまで到達する確率が高まりつつある。

加えて、日本では事業会社系CVCや富裕層エンジェル投資家が、初期段階投資に積極的に関与し始めている点も重要である。これは単なる資金供給にとどまらず、販路、技術、人材を伴う戦略的Early Stage投資を増やし、日本特有のエコシステム形成につながる可能性がある。今後は、数十億円規模のシード〜アーリー専業ファンドや、大学・研究機関と一体化した初期投資ビークルが増加することが見込まれる。 中長期的には、日本のEarly Stage VC投資額は年率10〜15%程度で成長し、2030年前後には年間3,000〜5,000億円規模に達すると予想される。これは世界水準と比べればなお小さいが、日本の産業構造や人口規模を考慮すれば、現実的かつ意味のある拡大である。

資金母体別分類

VCは、その資金の出どころ(資金母体・LP構成)によって、投資姿勢・意思決定速度・リスク許容度・回収志向が大きく異なる。スタートアップ企業にとって重要なのは、調達金額ではなく、その資本が何を目的としているかを見極めることであり、VC側にとって重要なのは、自らの資金の性格を正しく自覚したうえで投資行動を取ることである。

1.独立系VC

独立系VCは、年金基金、大学基金、ファミリーオフィス、保険会社など複数の外部投資家(LP)から資金を集めて運用する、最も純粋なVCである。投資判断の自由度が高く、シードからレイターまで幅広いステージに対応できる。成果は明確にファンドのリターンで評価されるため、金融的リターン最大化志向が強い。
長所:意思決定が比較的速く、投資仮説が明確
短所:ファンド成績へのプレッシャーが強い
構成比率(概算)
世界:45〜55%
日本:25〜35%

2.事業会社系VC

CVCは、事業会社が自社資金で設立・運営するVCである。目的は財務リターンだけでなく、技術獲得、事業提携、将来のM&Aなど戦略的価値の創出にある。投資分野は自社事業との親和性が高い領域に限定されやすく、意思決定には社内調整を要することが多い。一方で、販路・顧客・信用力という強力な非金銭的リソースを提供できる。
構成比率(概算)
世界:20〜25%
日本:35〜45%(非常に高い)

3.金融機関系VC

銀行、証券会社、保険会社など金融機関を母体とするVCである。投資は比較的保守的で、事業の安定性やガバナンスを重視する傾向が強い。日本では歴史が古く、地域金融機関系VCも多い。
長所:資金調達支援、IPO支援との連携

短所:リスク許容度が低く、意思決定が慎重。
構成比率(概算)
世界:10〜15%
日本:20〜25%

4.政府系・公的VC

政府、政府系ファンド、開発銀行、大学基金など公的資本を母体とするVCである。目的は産業育成、技術自立、地域振興などで、短期的なIRRよりも長期的な社会的リターンを重視する。
長所:長期資本、ディープテック(革新技術)・基礎研究に強い。
短所:投資判断が遅く柔軟性に欠ける場合がある。
構成比率(概算)
世界:5〜10%
日本:10〜15%

5.ファミリーオフィス系VC

超富裕層や一族資産を母体とするVCで、長期・柔軟・非定型な投資が可能である。ファンド形式を取らず、少人数で運営されるケースも多い。近年はマイクロVCとして存在感を増している。
長所:意思決定が非常に速い、長期視点。
短所:投資規模が小さい、組織的再現性に乏しい。
構成比率(概算)
世界:5〜10%
日本:5%前後

6.起業家自己資本型VC

成功した起業家自身の資金を母体とするVCで、経験と直感に基づく投資が特徴である。制度や形式よりも人と事業の可能性を重視し、創業初期で強い影響力を持つ。
長所:創業者にとっての実務的価値が高い。
短所:規模が限定的。
構成比率(概算)
世界:5%前後
日本:数%程度

世界の主要ベンチャーキャピタル

世界的に著名なベンチャーキャピタル(VC)ファームの代表的な企業とその投資額。

1.Andreessen Horowitz
約560億ドル規模の運用総額(AUM)を誇る米VC。ソフトウェア・インターネット企業への投資が強い。

2.Tiger Global Management
VC兼グロース投資のリーダー格。
約695億ドル規模のファンド。
グローバルテック案件への大規模出資で知られる。

3.Sequoia Capital
長年にわたりApple、Googleなど多くのユニコーンを輩出。過去のAUMは600億ドル前後の巨大ファンド。

4.Accel
様々なステージに投資する米VC。
運用規模は200億ドル台以上。
世界的に強力なネットワークがある。

5.Lightspeed Venture Partners
初期〜成長まで投資。
大型投資段階でも存在感を発揮している。

6.General Catalyst
200億ドル規模の資産を運用。
米テック領域で長年活躍。

7.New Enterprise Associates
250億ドル前後の資金規模。
シード〜レイトまで幅広く投資。

8.Bessemer Venture Partners
100年以上近い歴史を持つ米VC。

9.Qiming Venture Partners
中国系VCで70億ドル規模。
アジアのテックスタートアップへの投資が活発。

10.ARCH Venture Partners
主に科学・バイオ・ライフサイエンス領域で強い。
累計資金は70億ドル前後。

番外. JAFCO(ジャフコ)
日本最大級の独立系VC。
累計投資総額1兆円超。
投資社数4,200社以上。

投資利回り

VCの投資利回りは、一般的な株式投資や不動産投資と比べて構造が大きく異なる。VC投資は平均で安定的に高利回りが出る投資ではなく、極端に分布が歪んだ非対称リターン型投資である。

1.VC利回りの基本指標
①IRR(内部収益率)
時間価値を考慮した年率リターン。
➁MOIC(Multiple on Invested Capital)
投下資本が最終的に何倍になったか(例:3x、10x)。

2.VCファンドの一般的目標
トップティアVCのIRR:年率25〜30%超
優良VCファンドの目標IRR:年率15〜25%
一般的VCファンド:年率 5〜10%程度

3.スタートアップ単体で見たリターン分布
約50〜60%:失敗(0倍、全損)
約20〜30%:元本回収程度(1x前後)
約10〜15%:中程度の成功(2〜5x)
数%以下:巨大成功(10x〜100x超)

投資回収方法

VCの投資回収方法(Exit)は、一般的な株式投資と異なり、限られた手段に強く集中するという特徴を持つ。さらに重要なのは、回収方法ごとに成功確率・回収倍率・時間軸が大きく異なる点である。

1.主な投資回収方法(Exit手段)

① IPO(新規株式公開)
IPOは、VCにとって最も象徴的かつ理想的な回収手段である。スタートアップが株式市場に上場し、VCは保有株式を市場で売却することで投資回収を行う。IPOの最大の魅力は、回収倍率(MOIC)が非常に高くなり得る点にある。シード段階で投資した場合、10倍〜50倍、例外的には100倍超となるケースもある。一方で、上場までに7〜10年以上かかる場合があり、市場環境に強く左右される。またロックアップ期間が存在するといった制約も大きい。成功時の破壊力は最大だが、実現確率は低いという、典型的なVC的回収方法である。

② M&A(企業買収・持分売却)
M&Aは、近年世界的に最も重要性が高まっている回収方法である。スタートアップが事業会社や他のスタートアップに買収され、VCはその対価として現金または株式を受け取る。IPOと比較すると、回収までの期間が短く、成功確率が相対的に高いが、回収倍率は1.5〜5倍程度が中心という特徴がある。VCファンド全体の安定的な回収を支える屋台骨として機能するのがM&Aである。

③ セカンダリー売却
セカンダリーとは、未上場のまま、保有株式を他の投資家に売却する回収方法である。近年は、レイターステージVC、PEファンド、戦略投資家などが買い手となり、市場が拡大している。IPOを待たずに部分的回収が可能であり、ファンドの寿命管理に有効であるが、回収倍率は1〜3倍程度が中心となる。VCにとっては完全なExitではないが、流動性確保・リスク低減のための中間出口という位置づけである。

④ MBO・自己株取得
創業者や会社自身が、VC保有株を買い戻す形での回収である。日本やアジアでは比較的多く見られるが、回収倍率は1〜2倍程度である。企業の資金力に制約されるという理由から、大きなリターンは期待しにくい。VCとしては最低限の回収、失敗ではない撤退として使われるケースが多い。

⑤ 清算・倒産
回収方法というより回収不能であるが、VC投資では避けて通れない。投資先の約半数は最終的に0倍(全損)となる。

2.回収方法の構成比率(概算)

【件数ベース(世界)】
IPO:約15〜25%
M&A:約55〜65%
セカンダリー:約10〜15%

【金額ベース】
IPO:約50〜60%
M&A:約30〜40%
セカンダリー:約5〜10%

3.日系VCの回収方法

【件数ベース(日本)】
IPO:約10〜20%
M&A:約60〜70%
Buyback・セカンダリー:約10〜20%

【金額ベース(日本)】
IPO:約 40〜50%
M&A:約 40〜50%
その他:約 10%前後

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