時間を制する者が事業を制す

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成果を決めるのは能力ではなく時間配分

起業家の成果は、その能力や才能よりも時間の配分によって決まる。資金よりも、ネットワークよりも、実は最も希少で回復不能な資源は時間である。資金は失っても取り戻せる。人材も再び出会える。しかし時間だけは一方向にしか流れず、過ぎ去った一日は二度と戻らない。起業とは、限られた時間という生命資源を何に投じるかの戦いであり、時間の使い方こそが未来の成果を形づくる。起業家の生産性は、時間の質でほぼ決まると言っても過言ではない。

本質以外を切り捨てる勇気

まず重要なのは、本質以外を切り捨てる力である。挑戦には必ずノイズが伴う。雑務、無意味な議論、成果の出ない社交、他人の期待に応えようと費やす時間。時間とは命そのものであり、命は気づかぬうちに削られている。本質以外の活動は勇気を持って捨て去ることが、起業家にとっては不可欠である。やらないことを決める、断る基準を持つ。迷ったら削る。時間は増えない。だからこそ削ることが創造につながる。

睡眠/健康/集中/習慣が時間の質を決める

時間の質を高めるために最も優先すべきは、睡眠・健康・集中・習慣の管理である。多忙を理由に睡眠を削る者は短期の作業量こそ増えるが、長期の成果からは遠ざかる。睡眠不足は判断力を鈍らせ、創造性を奪い、感情の安定を失わせる。睡眠を無理に削ることは愚かである。健康も同じだ。食事を整え、運動を習慣とし、疲労を溜めずに心身をメンテナンスする。体調が悪化した経営者は、会社も沈む。起業家の体は会社の基盤であり、最も重要な経営資源である。

集中は時間を価値に変換するエンジン

集中とは、時間を価値に変える装置である。1時間の集中は、散漫な3時間に勝る。通知を切り、デバイスを遠ざけ、静かな場所で物事に没頭する。毎日1時間の深い集中を確保できれば、それだけで他者の数倍の創造性が手に入る。集中できない時間は、実質存在しないに等しい。仕事は量より密度が重要である。

習慣は意思決定を自動化し未来を積重ねる

習慣とは、意思決定を自動化し、未来を積み上げる回路である。良い習慣は勝手に前へ進む力を生み、悪い習慣は静かに未来を蝕む。毎朝の思考整理、体を動かすルーティン、計画と反省の実行。これらは地味だが、積み重なると圧倒的な成果の差となる。習慣化とは努力の節約であり、同じエネルギーで遠くまで行くための仕組みだ。

時間の配分が未来の成果をつくる

起業家でも時間は増やせない。だが質を高めることはできる。未来を変えるのは、量ではなく配分である。今日の1時間をどこに投じたかが、半年後の成果を決める。営業か、開発か、思索か。どの選択にも未来の重さがある。だからこそ時間を粗末にもせず、一瞬一瞬を意思を持って使うことが重要だ。時間を制した者だけが、事業を制する。起業家の成功は、才能ではなく時間の配分で決まるのである。


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