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来る者拒まず、去る者追わず
空海は「縁によって人は集まり、縁が尽きれば離れる」と説いた。執着を捨て縁に従う姿勢は禅思想とも重なり、起業家にとっても重要な指針となる。
執着が心を縛り、経営を停滞させる
起業とは、自ら道を切り拓く行為である。その道には成功もあれば、失敗もある。順調な時期もあれば、何をしてもうまくいかない時期も訪れる。その複雑に揺れ動く人生の中で、起業家が最も陥りやすいのが執着である。勝利への執着、過去への執着、顧客への執着、人脈への執着、数字への執着、プライドへの執着。これらは一見すると向上心に見えるが、一定限度を越えると心を縛り、視野を狭め、判断を狂わせる。
縁とはコントロールできない流れ
縁とは出会い・出来事・タイミングといった偶然の連鎖である。成功も失敗も多くは縁の影響を受ける。社員が離れる。取引が終わる。それも縁が尽きただけの自然の流れだ。縁が続くなら受け入れ、離れるなら無理に引き止めない。この姿勢が判断のゆがみを防ぐ。
縁に従う経営者は強くしなやかになる
縁を受け入れる者は、変化を恐れず、失敗すら成長の布石として捉えられる。コントロールできるのは外の結果ではなく、自身の意志と行動のみである。現状を受け入れ最善を尽くすという態度は、ストア哲学にも通じる普遍の原理である。
余白がある心に縁は集まる
空海は「心は空なればすべてを受け入れよ」と説いた。執着を手放すと心に余白が生まれ、新しい出会い・機会・流れが自然に入ってくる。
起業とは縁に乗る旅
起業家にとって縁に従うとは、出会いに感謝し、去る人を恨まず、機会が来れば掴むことである。数字や成果に固執せず改善を重ね、必要な縁が訪れれば受け入れ、不要な縁が離れる流れを信じて進む。執着を離れ、縁に従う。それが最も強く柔軟な経営の在り方であり、空海の教えは千年を越えて現代の起業家に生き続ける。
