第三次世界大戦は起こり得るか

2026.9.3

目次

複合戦争のシナリオ

現在既に第三次世界大戦と呼ぶには早計であるが、現在の世界は、冷戦終結後では最も複数の地域戦争が一つの世界戦争へ接続しやすい状態に入っている。米国、ロシア、中国、欧州、イスラエル、イランの誰かが最初から第三次世界大戦を始めようと考えることではない。むしろ各国が自国にとって合理的と思われる局地的行動を積み重ね、その結果として中東戦争、ロシア・欧州戦争、台湾戦争が連動してしまうことである。核兵器国が核兵器への依存を強め、軍備管理が弱体化する一方、誤算とエスカレーションの危険が高まっている。世界には約1万2187発の核弾頭が存在し、約2100~2200発が高い即応状態に置かれている。

現在は第三次世界大戦の入口なのか

現在の状況を第二次世界大戦と比較すると、大きな違いがある。第二次世界大戦ではドイツ、日本、イタリアという枢軸国と英米ソなどの連合国が明確な軍事陣営を形成し、主要国同士が直接戦闘を行った。2026年現在はまだそこまで至っていない。しかし構造的には、米国・NATO・日本・韓国・豪州と、中国・ロシア・イラン・北朝鮮との戦略的対立が以前より明瞭になっている。最も中国、ロシア、イラン、北朝鮮はNATOのような統一軍事同盟ではなく、中国もロシアやイランのために自動的に戦争をする義務を負ってはいない。したがって現状を表現するなら、第三次世界大戦ではなく、第三次世界大戦になり得る複数戦争が同時進行する前段階と見るのが最も冷静である。

危険度が最も高い中東

現在最も予測困難なのは米国・イスラエル対イラン戦争である。2026年2月から続く戦争は半年を経ても決着しておらず、イランは甚大な損害を受けながらも屈服していない。ホルムズ海峡をめぐる混乱も継続し、米軍自身も航空機、迎撃ミサイル、展開能力を消耗している。ここには非常に危険な逆説がある。イスラエルが圧倒的優位を維持している間よりも、このままでは戦争を終わらせられないとイスラエルや米国が感じ始めた時の方が危険である。歴史上、追い詰められた国家が戦線縮小ではなく戦線拡大を選択した例は確かに存在する。ただし経済危機になると国家は必ず戦争を起こすという歴史法則がある訳ではない。第一次・第二次世界大戦でも、経済危機だけでなく安全保障上のジレンマ、領土問題、民族主義、同盟関係、国内政治などが複合していた。中東で最も危険なのは、イスラエルとイランの戦争がイラク、シリア、レバノン、湾岸諸国へ広がり、米軍基地への大規模攻撃が発生することである。そうなれば米国は更に介入し、ロシアや中国もイランを直接参戦によってではなく、外交・情報・物資面で支援する可能性が高くなる。ここから世界戦争への第一の連結点が生まれる。

第二の火薬庫ロシアとNATO

ウクライナ戦争は4年半を超え、終結していない。プーチン大統領は9月1日にもロシア軍が戦場で優勢だと主張している。更にドイツのライプツィヒ空港をめぐるドローン事件では、EU諸国がロシア政府の関与を非難し、ロシア側は否定している。ここで最も恐ろしいのはウクライナそのものより、ロシアとNATOの直接衝突である。例えばポーランド、バルト三国、フィンランドなどNATO領域で多数の死者を伴う軍事事件が発生し、それがロシアによる攻撃と認定された場合、NATO第5条をめぐる判断が生じる。米国、英国、フランス、ドイツなどがロシア軍を直接攻撃すれば、それまでのロシア対ウクライナという戦争の性格が変わる。しかも現在、米国のPatriot迎撃ミサイルはイラン戦争などによって在庫が逼迫し、欧州防空にも懸念が出ている。これは非常に重要である。中東戦争と欧州戦争は既に兵器在庫という形で相互連結している。

第三の火薬庫台湾

世界戦争への転換点として最大のものは台湾であろう。台湾は防衛費を初めて1兆台湾ドル超へ引き上げる方針を示し、中国からの軍事的圧力に備えている。台湾海峡の澎湖諸島などでも防衛準備が強化されている。中国にとって台湾問題は、ウクライナやイランとは次元が異なる。北京は台湾を中国領土の一部と位置付けており、最終的な統一を国家目標としている。そして中国が最も魅力を感じる時期があるとすれば、米軍が中東と欧州で同時に拘束されている時である。これは中国が必ず台湾を攻撃するという意味ではない。むしろ全面上陸侵攻よりも、軍事演習、海上封鎖、航空封鎖、経済制裁、サイバー攻撃などを組み合わせ、台湾を徐々に孤立させる方が中国にとってリスクは低い。しかし米軍が封鎖を突破しようとすれば、米中両軍が直接衝突する。ここで初めて世界最大の二大国が直接戦争状態になる。

最も危険な大戦シナリオ

最悪のシナリオは、三つの戦争が同時に連結することである。たとえば中東で米国・イスラエルとイランの戦争が激化する。米国は空母、航空機、防空ミサイル、情報資産などを中東へ集中する。その時期にロシアがウクライナへの攻勢を強め、NATOとの偶発的あるいは限定的な直接衝突が発生する。米国は欧州への軍事資源投入も要求される。その状況を北京が米軍が三正面戦争を戦えない機会と判断し、台湾周辺を事実上封鎖する。米国が台湾支援に出れば、米国対イラン、米国・NATO対ロシア、米国・日本など対中国という三つの戦争が同時進行する可能性が出てくる。更に北朝鮮が韓国に軍事的圧力を強めれば第四戦線となる。ここまで来れば、名称が何であれ、実質的には第三次世界大戦と呼ばざるを得なくなる。

第二次世界大戦とは全く違う形

重要なのは、第三次世界大戦が起こったとしても、1940年代のように何百万もの兵士が国境を越えて戦う戦争にはならないことである。最初に世界を襲うのは経済戦争であろう。ホルムズ海峡と台湾海峡が同時に不安定化すれば、石油、LNG、半導体、コンテナ輸送、保険料、航空輸送が一斉に混乱する。続いて金融戦争が始まる。ドル決済、人民元決済、SWIFT、外貨準備凍結、国債、金、ステーブルコインなどが武器化され、世界経済は実質的に二つ以上の決済圏へ分断される。更にサイバー攻撃によって銀行、電力網、通信、港湾、衛星、データセンターなどが攻撃対象となる。宇宙空間でも衛星妨害が起きれば、GPS、通信、金融決済、軍事指揮まで影響する。AIも情報戦、無人兵器、サイバー戦、標的識別などを通じて戦争を加速させる。したがって第三次世界大戦は、軍事戦争+経済戦争+金融戦争+サイバー戦争+宇宙戦争+AI戦争になる可能性が高い。

核戦争と段階的エスカレーション

全面核戦争が最初から計画される可能性は低い。米国もロシアも中国も、全面核戦争が自国の破壊につながることを理解している。問題は別にある。通常戦争で劣勢になった核保有国が、相手を威嚇する目的で核戦力の警戒態勢を上げる。相手側も警戒態勢を上げる。そして相手が先に撃つかもしれないという恐怖が強くなる。誤警報や誤算が発生することが最大の危険である。中国の核弾頭も推定約620発まで増加している。冷戦期には米ソ間に危機管理のためのルールが次第に形成された。現在はむしろ米露中三極化しており、管理が複雑になっている。これは冷戦期とは異なる新しい危険である。

欧州経済危機と戦争

確かに二度の世界大戦はいずれも欧州を中心として発生した。しかし現在のEU諸国が経済停滞を解消するためロシアとの大戦争を始めるという可能性は低い。現代欧州には民主制度、EU、NATO、相互依存体制があり、大規模戦争を積極的に望む経済合理性はほとんどない。むしろ危険なのは、欧州が戦争を望むことではなく、ロシアを抑止するには強硬姿勢しかないと考え、ロシア側も西側はロシアを破壊しようとしていると考える安全保障ジレンマである。双方が防御目的で軍備を増強しても、相手から見れば攻撃準備に見える。第一次世界大戦前の欧州で起きた現象にむしろ近い。

危険な国家イスラエル

イスラエルはイランとの戦争で予想外な苦戦と国家滅亡の危険性を感じ、戦争を拡大する可能性がある。国家指導部が、時間が経つほど状況が悪化すると判断した場合は危険度である。これは国際政治でいう予防戦争の典型的な論理である。将来自国が弱くなると考える国家ほど、戦うなら今しかないという判断をする可能性がある。イスラエルだけでなく、中国の台湾政策、ロシアのNATO観、更には米国の対中政策にも、この論理が入り込む危険がある。世界大戦を引き起こす最大の心理は勝てると思うことだけではない。今戦わなければ、将来もっと不利になるという恐怖なのである。

第三次世界大戦の可能性評価

現在の情勢を整理すると、今後数年間に全面的な第三次世界大戦が発生する確率を高いと断言する段階ではない。しかし、冷戦終結後の1990年代や2000年代と比較すれば、明らかに大幅に上昇している。特に危険なのは単独危機ではない。イラン戦争の長期化+ロシア・NATO間の事件+台湾海峡危機が同時に起きることである。この三つは独立しているようで、実際には米軍戦力、ミサイル在庫、エネルギー価格、金融市場、外交力を通じて接続している。したがって現在を、第三次世界大戦に入ったとまでは言えないが、世界戦争へ転化し得る複数戦争が相互接続を始めた時代と言える。そして最も危険なのは、ヒトラーのような一人の指導者が世界征服を企てるシナリオではない。米国は米国の安全保障を守り、中国は台湾問題を解決し、ロシアは自国周辺の安全保障を確保し、イスラエルは国家存続を守り、イランは体制と主権を守り、欧州はロシアを抑止しようとする。それぞれが自国の論理では合理的に行動した結果、全体として非合理な世界戦争へ落ちていく。これこそ1914年にも見られた構図であり、現在の国際情勢で最も警戒すべき点である。

戦争回避のために何をすべきか

現在最も重要なのは、戦争をなくすという理想論だけではない。各国が相互不信を抱え、軍備増強を続ける状況でも、局地戦を世界戦争へ拡大させない仕組を今のうちに作ることである。特に必要なのは、抑止力を維持しながら、相手を完全に追い詰めないことである。歴史上、大戦争はしばしば相手が弱いからではなく、今戦わなければ将来もっと不利になるという恐怖から始まっている。

1.中東戦争

現在最も緊急性が高いのは中東である。米国とイランの攻撃の応酬は続き、ホルムズ海峡をめぐる緊張も極めて高い。カタールなどを通じた仲介も続いているが、戦闘停止には至っていない。ここで最も避けなければならないのは、どちらかに無条件降伏を要求することである。イラン体制の完全崩壊を戦争目的にすれば、イラン側には戦争を続ける以外の選択肢がなくなる。逆に、イスラエルの安全保障上の懸念を完全に無視しても停戦は成立しない。したがって現実的な出口は、イランに体制存続を認める代わりに、核開発、ミサイル、ホルムズ海峡、代理勢力について段階的な制約を交渉することである。重要なのは、米国だけが交渉主体にならないことである。オマーン、カタール、サウジアラビア、トルコ、EU、更に中国を仲介枠組みに入れるべきである。中国はイランとの経済関係が深いため、むしろ北京を停戦保証国に取り込むことには合理性がある。イランを中国側に追いやるのではなく、中国にも中東安定の責任を負わせるのである。更にイスラエルには安全保障保証を与える一方、戦争目的を無制限に拡張させない仕組が必要である。

2.ロシア・NATO戦争

ロシアが意図的にNATOとの全面戦争を始める合理性は現在のところ高くない。フィンランドのストゥブ大統領も、ロシアがNATOを意図的に攻撃する可能性は低いとの見方を示している。むしろ怖いのは偶発事故である。ロシアのミサイルや航空機がNATO領域に入り、多数の死者が出る。NATO側がロシア攻撃と認定する。報復する。ロシアが更に報復する。この連鎖が最も危険である。したがって米露間、NATO・ロシア間には、冷戦時代以上に強力な軍事ホットラインを再構築すべきである。航空機、艦艇、ドローン、ミサイルが一定距離以内に接近した場合の行動規則も明文化する。同時にウクライナについて、現実を受け入れる外交設計も必要になる。

3.台湾侵攻

台湾海峡について最も危険なのは、中国の全面上陸侵攻だけではない。台湾周辺での中国軍・海警による活動は日常化しており、台湾側も防衛費を増額している。中国は封鎖を想定した訓練も強化している。したがって台湾問題では三つのことを同時に行う必要がある。第一に、中国に武力統一のコストが極めて大きいと理解させるため、台湾の防衛能力を維持することである。第二に、台湾側にも一方的な法的独立宣言など、中国に今しかないと思わせる行動を避けてもらう。第三に、米中間に軍事危機管理チャネルを常設することである。中国には攻めれば高くつくと思わせ、台湾には今すぐ独立しなければならないとは思わせず、米国には曖昧さを完全に捨てさせないという微妙な均衡が必要になる。台湾問題で最悪なのは、どちらかが時間は自分に不利だと考えることである。北京が数年後には台湾防衛が強くなり過ぎると考えたり、台湾が将来中国との差が開き過ぎると考えたりすれば、予防戦争的思考が生まれる。したがって最大の平和政策は、時間を味方につける制度を作ることである。

4.朝鮮半島

朝鮮半島についても、完全非核化だけを交渉開始条件にすると対話が成立しなくなる。韓国の李在明政権は現在、米朝対話再開の環境を整える必要性を明確に主張している。現実的には、最終的非核化と当面の危機管理を分ける必要がある。まず核実験、ICBM発射、核物質増産などを凍結する。その見返りとして限定的な制裁緩和や人道支援を行う。更に南北軍事ホットラインを復活させる。朝鮮半島では、小規模な砲撃や海上衝突が急速に大規模戦争へ転化する危険がある。

5.核戦争

実は最も緊急なのは核軍備管理かもしれない。世界には約1万2187発の核弾頭が存在し、そのうち2100~2200発程度が高い即応状態にある。更にNew START失効後、米露間の核兵器について透明性と予測可能性が低下している。しかも現在は米露二極ではない。中国の核戦力が急増しているため、米国-ロシア-中国という三角形を前提とした軍備管理に移行しなければならない。いきなり核弾頭削減交渉を始める必要はない。最初に必要なのは、核実験を行わないこと、核兵器の先制使用条件を明確化すること、大規模核演習を事前通告すること、ICBM発射を通知すること、早期警戒システムの誤警報時に連絡できるホットラインを設けることである。米中露間の戦略対話がほとんど進まず、核軍備管理の空白が危険を増している。

6.三正面戦争を起こさせない仕組

最悪なのは、中東、ウクライナ、台湾が同時に発火することである。したがって米国外交には、一つの戦争に集中して勝つという発想以上に、複数の戦争を同時発生させないという戦略が必要である。中東戦争が激化している時期には、中国との対話をむしろ増やす。台湾危機が高まれば、ロシアとの軍事危機管理を強化する。ウクライナ戦争が激化すれば、中東では停戦外交を加速する。各戦線を別々に扱うのではなく、世界全体の戦争総量を管理するという発想が必要である。

7.欧州が今すべきこと

欧州は二つの極端を避けるべきである。米国が守ってくれるから何もしないのも危険であり、ロシアとは絶対に妥協できないから全面軍拡するのも危険である。必要なのは強力な欧州防衛力を作りながら、ロシアとの危機管理外交を同時に復活させることである。軍事力を増強する目的は戦争をすることではない。戦争をしても勝てないと相手に思わせながら、戦争をしなくても安全は確保できると相手にも思わせることである。この二つがそろって初めて抑止は安定する。

8.中国の包囲と依存

中国を経済的・軍事的に完全包囲しようとすれば、中国指導部に米国は中国の発展を阻止しようとしているという認識を強める。逆に中国経済へ過度に依存すれば、中国に経済的威圧の手段を与える。したがって必要なのはデカップリングではなく、現在よく使われる表現でいうデリスキングである。半導体、通信、軍民両用技術など安全保障上重要な分野では依存を下げる。一方、自動車、一般消費財、観光、農業、環境技術などでは貿易を続ける。経済関係を完全に切断しないこと自体が戦争抑止になる面もある。

9.相手を悪魔化し過ぎない

世界大戦前には、対立国を単なる競争相手ではなく存在してはならない敵とみなす傾向が強まる。これは非常に危険である。ロシアを完全に解体すべき敵、中国共産党を倒さなければ平和にならない敵、イラン政権を消滅させなければならない敵、逆に米国を世界から追放しなければならない敵、と考え始めれば外交の余地がなくなる。戦争回避では、相手の体制を好きになる必要はないが、その体制が存在したまま共存できる条件を考える必要がある。これは融和政策とは異なる。強力な抑止力を持ちながら共存条件を探すことである。

10.世界危機管理の枠組

最も現実的なのは、新しい巨大な世界政府を作ることではない。まず米国、中国、ロシア、英国、フランスという国連安保理常任理事国を中心に、日本、ドイツ、インドなどを加えた常設の大国危機管理会議を設置することである。ここでは領土問題を解決しなくてもよい。核誤射、ミサイル発射、サイバー攻撃、衛星攻撃、海上封鎖、原子力施設攻撃など、絶対に世界戦争へ拡大させてはいけない行為について最低限のルールだけを作る。冷戦時代にも米ソは敵対しながら軍備管理を行った。現在必要なのは、これを米中露を中心とする多極世界へ拡張することである。戦争を避ける鍵は強さと出口を同時に与えることである。現在の世界で平和を維持するために必要なのは、単なる軍縮でも単なる軍拡でもない。弱すぎれば攻撃を誘発する。しかし相手を完全に包囲し、逃げ道をなくしても戦争を誘発する。したがって最も重要なのは、攻撃すれば高い代償を払う。しかし攻撃しなくても国家の存続と一定の利益は保証されるという状況を、米国、中国、ロシア、イラン、イスラエルなどすべての当事者に作ることである。1914年の最大の教訓は、各国が戦争を欲したから世界大戦になったというより、動員、同盟、恐怖、誤算によってもう引き返せないと各国が考える状況が生まれたことである。2026年に最も必要なのは、まさにその逆である。どれほど危機が深まっても、最後まで引き返せる道を制度として残しておくこと。これが、第三次世界大戦を避けるための最も重要な原則である。

産業と投資に関する考察

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