米国はドル体制を持続できるのか

2026.9.3

目次

弱体化要因と尚残る強み

米国の連邦債務は2026年に40兆ドルを超える水準に達し、もはや財政赤字が大きいという段階を越えて、世界金融秩序に関わる問題となっている。ただし、米国が近い将来ただちに財政破綻する可能性は低い。一方で、これまでのように世界各国が当然のようにドルと米国債を保有し、低利で米国の赤字をファイナンスする体制は、確実に弱くなりつつある。重要なのは米国債が売れなくなるかではなく、米国が高い金利と政治的コストを払わなければ国債を消化できなくなるかである。

米国最大の問題

CBOの2026年2月予測では、2026年度の財政赤字は約1.9兆ドルであり、2036年には約3.1兆ドルまで拡大するとされる。市場が保有する連邦債務はGDP比101%から120%へ増加し、2036年には約56兆ドルになる。更に純利払い費は2026年の約1兆ドルから2036年には約2.1兆ドルへ倍増する見込みである。したがって、米国財政の本当の危険は40兆ドルという残高だけではない。国債を借り換えるたびに高金利が政府財政へ転嫁されることである。米国は自国通貨で国債を発行するため、技術的にはドルを供給してデフォルトを防ぐことができる。しかし、それを過度に行えばインフレ、ドル安、長期金利上昇という別の形で負担が現れる。米国は、破綻しないことと、何の問題もなく借金を増やせることを混同してはならない国になっている。

ネガティブ要因

1.軍事力とドルの関係は無視できない

ドル基軸体制は経済だけによって成立している訳ではない。米国の軍事力、同盟網、海上交通路の保護、金融制裁能力、米国市場へのアクセスという総合的な国家権力がドルへの信認を支えてきた。したがって、中東で米軍の圧倒的優位に疑問が生じたり、イランとの戦争が長期膠着化したりすれば、その心理的影響は軽視できない。ただしイラン戦争によって米国が敗北したからペトロダラー体制が崩壊したとまで断定するのは早い。ドル決済は軍事的威信だけではなく、金融市場の厚み、為替流動性、法制度、決済インフラによって支えられている。それでも、米国軍事力が無限ではないことが明らかになれば、安全保障を米国に依存する以上ドルも利用するという従来の結び付きが弱まる。

2.米国のソフトパワーを消耗させる危険

イスラエルへの米国の強い支援は、中東のみならず欧州やグローバル・サウスにおける米国の外交的立場を難しくしている。2021~25年のイスラエルの主要兵器輸入の68%を米国が供給している。問題は兵器供給だけではない。米国が国際法や人権を他国には要求しながら、同盟国には異なる基準を適用しているという印象が広がれば、ルールに基づく国際秩序という米国の評判が傷つく。これはドルを直接崩壊させるものではないが、ドル体制を支える政治的正統性を徐々に侵食する。

3.脱ドル化とドル崩壊

ロシア、中国、イランを中心として、自国通貨決済や人民元決済、二国間スワップなどドルを介さない取引は確実に増えている。更に各国中央銀行による金購入も非常に強い。2025年には中央銀行が世界全体で約863トンの金を純購入し、中国人民銀行も保有量を約2,306トンまで増加させた。2026年第1四半期にも中央銀行は約244トンを購入している。これはドルを捨てるというより、ドルだけには依存しないという行動である。この違いは重要である。実際、IMFの2026年第1四半期COFERでは、世界の外貨準備に占めるドル比率は約57.1%であり、前四半期の56.4%からむしろ上昇している。したがって現状はドル崩壊ではなく、ドル一極集中から緩やかな多極化への移行と見る方が正確である。

4.中国の輸出力

中国の脅威は単なる低賃金製造業ではなくなった。EV、蓄電池、太陽光、ドローン、通信機器、産業ロボット、造船、更に生成AIまで国家資本と巨大国内市場を利用して価格競争を仕掛けている。2026年には中国の貿易黒字が1兆ドルを超える規模となり、米国だけでなく欧州各国も中国の過剰生産と輸出攻勢を問題視するようになった。最も、これは中国の強さであると同時に弱さでもある。内需不足、不動産問題、人口動態などから、輸出依存を強めざるを得ない側面がある。したがって中国が直ちに米国に代わる世界需要の中心になる訳ではない。

米国の強み

1.米国最大の切り札AI

AIは米国最大の切り札ではあるが、中国との差は想像以上に縮まった。AIについては米国が完全独走という表現は修正する必要がある。2025年の米国民間AI投資額は約2,859億ドルで、中国約124億ドルの23倍以上であった。米国には5,427ものデータセンターが存在し、民間資本、GPU、クラウド、ソフトウェア、VC、大学研究を組み合わせたAI産業エコシステムは依然突出している。しかしモデル性能では中国との差がほぼ消失している。2026年3月時点で米中最上位モデルの性能差はわずか2.7%程度とされ、中国は論文、引用、特許数、産業用ロボットなどではむしろ優位である。資本・クラウド・半導体・商用AIでは米国優位、量産・国家動員・製造AIでは中国が急追という構図である。

2.ステーブルコイン

ステーブルコインは極めて巧妙な新しいドル圏構想である。2025年成立のGENIUS 法を米財務省自身が、ドルの準備通貨としての地位を強化する制度と位置づけている。ベッセント財務長官は、ドル建てステーブルコインが世界中にドルへのアクセスを広げ、その裏付け資産として米国債需要を増加させることを明確に期待している。銀行預金→ドル、中央銀行外貨準備→米国債という20世紀型の仕組に加えて、世界のデジタル決済→ドルステーブルコイン→発行会社が米国短期国債保有という21世紀型のドル循環を作ろうとしている。非常に合理的な戦略である。成功すれば、アフリカ、南米、アジアなど銀行システムが弱い国々までデジタルドル圏に取り込める。ただしBISなどは、ステーブルコインが銀行預金を流出させ、金融政策や金融安定を損なう危険も指摘しており、万能薬ではない。

3.兵器産業

兵器産業については米国優位がむしろ拡大している。軍事力について個別戦争で問題が露呈したとしても、兵器市場では話が違う。米国は2021~25年に世界の主要兵器輸出の42%を占め、前期の36%から更にシェアを拡大した。世界99か国へ輸出している。F-35、ミサイル、潜水艦関連技術、衛星、ISR、サイバー、AI軍事システムなどを含めた総合システムとして購入できる国は限られている。したがって米国の軍需産業は今後も重要な外貨獲得・同盟維持手段となる。

米国財政はいつまで持つのか

突然崩壊よりも徐々に高コスト化すると考えるのが最も現実的であろう。米国には依然として巨大な民間金融市場、軍事同盟、テクノロジー企業、AI、資本市場、ドル決済網がある。人民元には資本規制があり、中国国債市場も米国債市場ほど開放されていない。ユーロには統一財政主体が存在せず、日本円では市場規模が不足する。したがって、ドルを直ちに置き換える通貨は存在しない。しかしこれは米国にとって永遠の免罪符ではない。最大の分岐点は、名目GDP成長率>国債平均調達金利という関係を維持できるかどうかである。AIなどで5~6%の名目成長を維持し、平均国債金利をそれ以下に抑えられれば、50兆、60兆ドルの債務でも相対的には管理可能である。反対に、長期金利が5~6%以上で固定され、経済成長率が3~4%に低下すれば、利払いが歳出を圧迫し、増税、インフレ、金融抑圧、歳出削減のいずれかを迫られる。米国債市場で現在起きている金利上昇は、この意味で非常に重要な警告である。

日本は米国債を持ち続けられるか

日本は2026年6月時点でも約1.12兆ドルの米国債を保有し、世界最大級の外国保有国である。一方、中国は約6,330億ドルまで減らしている。日本は巨額の対米貿易・投資からドルを受け取り、その外貨準備を、安全性、流動性、市場規模を考慮して米国債で運用している。問題は、これほどの集中を今後も続ける合理性があるのかということである。ここには十分検討の余地がある。

核の傘は存在するのか

制度として米国の拡大核抑止は一応存在する。2024年12月には日米両政府が拡大抑止ガイドラインを策定し、核を含む米国の抑止力と日本の防衛能力を組み合わせる方針を再確認している。しかし、実際に北京やモスクワから核攻撃を受けた際、米国大統領がニューヨークやロサンゼルスへの核報復を覚悟して東京のために核戦争を開始するのかという問題は全く別である。これは条約でも完全には保証できない。したがって日本が問うべきなのは核の傘があるかないかという二択ではなく、米国の拡大抑止への依存度をどこまで下げれば日本の選択肢が最大化するかである。

日本が取るべき道

日本が米国依存から離れる最も現実的な方法は、突然日米同盟を破棄することではない。金融、軍事、エネルギー、技術の四分野で依存集中度を10~20年かけて引き下げることである。

第一に外貨準備については、米国債を一括売却する必要はない。売ればドル安・円高を招き、日本自身が損失を被る。むしろ新規外貨収入について、米国債への再投資比率を徐々に下げるべきである。金、ユーロ建て資産、資源権益、世界インフラ、半導体・AI・エネルギー関連の戦略資産へ分散する。

第二に、防衛装備について米国製兵器への依存率を下げる必要がある。戦闘機、ミサイル、衛星、サイバー、無人機、潜水艦などで国産比率を上げ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、オーストラリア、インドなどとの共同開発を増やす。

第三に、核抑止についても選択肢を増やすべきである。米国との拡大抑止協議を続けながら、英国・フランスとの戦略対話を強化し、日本独自の長距離通常抑止力、ミサイル防衛、地下施設、潜水艦戦力、宇宙・サイバー能力を高める。

第四に、最も重要なのがAI、半導体、クラウドである。ここで米国に完全依存してしまえば、防衛だけ自立しても意味がない。日本独自のAI計算資源、データセンター、基盤モデル、半導体設計・製造、電力供給を国家インフラとして持つ必要がある。

日本が目指すべきは対米対等化

米国は衰退しているから捨てるべき国でもなければ、永遠にすべてを依存してよい絶対的覇権国でもない。今後の世界は、米国+中国+EU+インド+資源国+デジタル通貨・金が複雑に競合する多極的な世界になる可能性が高い。その中で、日本が米国債を巨額に保有し、軍事装備を米国から購入し、核抑止を米国に委ね、AI・クラウドまで米国企業へ委ねる状態を続ければ、名目上は主権国家でも、戦略的選択肢は非常に狭くなる。したがって日本に必要なのは反米政策ではない。米国との同盟を維持しながら、米国がいなくても一定期間は国家を維持できる能力を持つことである。その時初めて日米同盟は保護する側と保護される側の関係から、離れようと思えば離れられる二国間の対等な同盟に近づく。そして皮肉なことに、その状態になった時こそ、米国にとっても日本を失いたくないという動機が強まり、日本の交渉力は最大になる。

欧州はどうすべきか(付記)

欧州が現在直面している問題は、単に米国離れをするかどうかではない。むしろ、これまで米国に依存してきた金融、安全保障、AI、エネルギー、決済の各分野で、どこまで自前の能力を持つかという問題である。しかも中国への依存を深めれば、米国依存を中国依存に置き換えるだけになりかねない。したがって欧州が目指すべき方向は、米中どちらかへの従属ではなく、米国との同盟を維持しながら第三極としての戦略的自立性を獲得することである。

1.ユーロ建

欧州は今後、米国の巨額財政赤字をファイナンスするために米国債を際限なく購入できる訳ではない。米国債利回りは2026年に上昇し、外国投資家による米国債需要が以前ほど確実ではないとの懸念も強まっている。重要なのは、欧州自身も防衛、エネルギー転換、AI、社会保障に膨大な資金を必要としており、その資金を米国財政のファイナンスに優先的に振り向ける合理性が薄れていることである。欧州にとって理想的なのは、EU共同債を増やし、米国債に匹敵する巨大で流動性の高いユーロ建て安全資産を育てることである。ECBによれば、ユーロは現在でも世界の外貨準備の約20%、国際金融全体でも約20%を占める世界第2位の通貨であり、2025年にはユーロ建て国際債券発行が過去最高となった。ユーロにはドルに対抗できる潜在力は既に存在する。問題は、米国には巨大な統一国債市場があるのに対し、欧州ではドイツ国債、フランス国債、イタリア国債などに市場が分裂していることである。EUが防衛、AI、エネルギー、インフラを共同債でファイナンスすれば、同時に巨大なユーロ建て資本市場を形成できる。その意味では、現在始まっているEU共同防衛融資は単なる軍事政策ではなく、ユーロを世界通貨へ育てる金融政策として考えるべきである。

2.欧州防衛

欧州だけで本当に欧州を防衛できるのかと問われれば、現状では、まだ難しい。EU27か国の防衛費は2025年に4,180億ユーロ、2026年には4,540億ユーロへ増加する見込みであり、金額だけなら相当な規模である。しかし問題は総額よりも分散である。欧州にはフランス、英国、ドイツ、イタリア、スウェーデンなど優秀な軍需産業が存在するにもかかわらず、各国が別々の戦車、戦闘機、ミサイル、通信システムを開発しており、米国ほど統合された兵器体系になっていない。更に、弾道ミサイル防衛、衛星ISR、長距離攻撃能力、輸送機、空中給油、統合指揮システムなどでは、依然として米国への依存が大きい。2026年のイラン戦争では米軍のパトリオット迎撃ミサイル在庫まで逼迫し、欧州のミサイル防衛にも影響が及んでいる。これは逆説的に、米国が頼りないというより、米国一国に世界中の防衛を依存させる仕組自体に限界があることを示している。したがって欧州は米国製兵器を買わないとするべきではない。F-35やPatriotなど必要なものは当面購入しながら、10~20年かけて欧州製装備へ置き換えられる分野を増やすべきである。MBDA、Airbus、Leonardo、Rheinmetall、Thales、Saabなどを国別企業と考えるのではなく、事実上の欧州防衛産業として統合していく必要がある。最終的には、フランスと英国の核戦力、欧州独自のミサイル防衛、宇宙偵察、長距離打撃能力を組み合わせた欧州独自の抑止力を構築する必要がある。

3.AI規制と欧州

欧州にとって最も深刻なのは、おそらく軍事よりAIである。欧州は個人情報保護、競争政策、AI規制について世界で最も厳格なルールを作ってきた。しかしGoogle、Microsoft、Amazon、Meta、OpenAI、Anthropic、NVIDIAなど、AI経済を支配する主要企業の大部分は米国企業である。これでは、AIを作る米国、AIを大量生産する中国、AIを規制する欧州という構図になりかねない。EUも危機感を持って政策を転換し、2026年時点で19のAI Factoryを整備し、更にAI Gigafactory構想を進めている。また約3.9億ユーロで新しいLUMI-AIスーパーコンピュータを発注するなど、計算資源への投資を加速している。これは正しい方向だが、まだ規模が小さい。欧州が本気でAI主権を求めるなら、AI規制だけでなく、電力、データセンター、GPU、クラウド、モデル開発、VC、大学研究までを一体化して巨額投資する必要がある。同時に重要なのは、米国AIを排除しないことである。むしろOpenAI、Google、Anthropic、Microsoftなどを欧州市場で利用しつつ、Mistralなど欧州企業にも巨大な公共調達を与えるべきである。米国AIを排除して欧州AIを守るのではなく、米国AIを利用しながら欧州AIを育てるという発想が必要である。

4.EV競争

中国のEV、蓄電池、太陽光パネル、通信機器などの競争力は非常に高くなっている。欧州が単純に市場を開放すれば、自動車という欧州最大級の製造業が大きな打撃を受ける。しかし、すべてに高関税をかけて中国製品を排除してしまえば、EV価格が上昇し、欧州自身のグリーン転換が遅れる。したがって欧州が取るべき政策は、中国企業を完全に締め出すのではなく、欧州市場に参入するなら欧州で作らせるという戦略である。中国企業に欧州域内で工場、研究所、電池工場、部品サプライチェーンを持たせ、一定比率の現地調達と技術移転を求める。これは1980年代に米国が日本自動車メーカーに対して事実上取った政策と近い。トヨタ、ホンダ、日産が米国内生産を拡大した結果、米国には日本車メーカーの巨大な生産基盤が形成された。BYDなどについても同じ発想を採ることができる。

5.欧州と人民元圏

ここでは慎重であるべきである。人民元は国際貿易金融では存在感を急速に高めており、2026年3月にはSWIFTベースの貿易金融で約8%まで上昇している。しかし世界外貨準備に占める人民元の比率は依然約2%にすぎない。一方ドルは約57%、ユーロは約20%である。これは非常に重要な数字である。中国は世界最大級の貿易国にはなったが、人民元はまだ世界的な貯蓄通貨にはなっていない。背景には資本規制、法制度、国家による金融介入、中国政府への政治的信認などの問題がある。したがって欧州がドル依存を減らすために人民元依存を増やすのは合理的ではない。むしろ、ドル60、ユーロ20、人民元その他20という世界を、ドル45、ユーロ30、人民元10、その他15程度のより多極的な通貨体制へ持っていくことが、欧州にとって望ましい。欧州の目的はドルから人民元への乗り換えではなく、ユーロを第三の柱ではなく第二の柱まで引き上げることである。

6.ドル決済圏との付き合い方

欧州はドル決済圏から離脱すべきではない。米国資本市場は依然世界最大であり、ドルは貿易、商品取引、デリバティブ、金融、航空機、エネルギーなど広範囲に利用されている。ドル圏から離脱することは、現時点では欧州企業自身に巨大なコストをもたらす。しかし、ドルしか使えない状態からは脱却するべきである。そのためには、EU域内貿易、エネルギー輸入、アフリカとの貿易、地中海圏との取引、グリーン投資、デジタル決済についてユーロ建て比率を高める必要がある。そしてデジタルユーロやユーロ建てステーブルコインを世界決済に展開することが重要になる。米国がドルステーブルコインによって21世紀型のドル圏を作ろうとしている以上、欧州が中央銀行デジタル通貨の国内利用だけを議論していては遅い。欧州も、デジタルユーロ圏をアフリカ、中東、地中海、東欧まで拡張するという地政学的構想を持つべきである。

7.欧州と統合

欧州には約4億5千万人の人口、巨大なGDP、世界有数の製造業、金融市場、大学、航空宇宙産業、原子力技術、軍需産業がある。したがって、潜在能力だけなら世界第三極になるには十分である。問題は国家が27に分かれていることである。防衛だけでもフランス、ドイツ、イタリア、ポーランドなどが別々に調達し、AI政策も国家ごとに異なり、資本市場も細分化されている。欧州の最大の競争相手は実は米国でも中国でもなく、欧州自身の分裂である。欧州は米国の属国でも、中国の市場でもない第三極を目指すべきである。欧州にとって最も危険なのは、米国が弱くなることそのものではない。米国が弱くなった後も、欧州自身が米国なしでは防衛できず、米国AIなしではデジタル経済を動かせず、中国なしでは工業製品を調達できず、ドルなしでは貿易決済できない状態に留まることである。したがって欧州の戦略は非常に明確である。安全保障ではNATOを維持しながら欧州軍事力を作る。金融ではドルを利用しながらユーロを国際化する。AIでは米国技術を利用しながら自前のAI産業を育てる。中国とは貿易しながら依存しない。脱米でも親中でもなく、欧州を一つの自立した極にすることである。そのためには、防衛共同債、AI共同投資、エネルギー共同調達、資本市場統合、デジタルユーロを一つの戦略として扱う必要がある。現在のEUがここまで踏み込めるかどうかが、2030年代に欧州が米中と並ぶ世界極として残るのか、それとも豊かではあるが政治的・技術的には二流の地域へ後退するのかを決めることになる。

産業と投資に関する考察

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