世界の住宅不動産予測

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欧州の住宅不動産

ロンドンやパリの中心部は、今後も世界最高水準の資産保全力を持つ一方、これから大きく評価が上がる都市という意味では、すでに価格が成熟しすぎている。今後10年を見る場合には、現在の価格水準よりも、①国際的な富裕層人口が増えるか、②歴史・美術・食・教育などの文化資本が厚いか、③中心部の供給を増やしにくいか、④都市経済が成長するか、⑤外国人所有や賃貸への規制が過度でないか、という五つを組み合わせて考えるべきである。現在の欧州住宅市場では、新規供給の減少がかなり構造化している。2026年について、欧州の住宅完成戸数が20年以上で最低水準へ向かい、特に都市部で供給不足が強い。一方、ロンドンからは税制変更などを背景に富裕層資金の一部が欧州大陸へ移動しており、特にイタリア、スペイン、ポルトガルへ流れている。次の10年をロンドン・パリの代替都市を探す時代になると予想される。

欧州の注目すべき都市

第1位マドリード

最も注目したいのはマドリードである。気候、食文化、美術館、歴史的建築、治安、交通、国際空港、欧州主要都市としての規模が高い水準で揃っているにもかかわらず、これまでロンドン、パリほど国際資本が集中してこなかった。特に重要なのがSalamanca、Jerónimos、Chamberí、Justicia周辺である。Salamancaはパリ8区やロンドンのMayfairに相当するが、新築住宅供給は2020~2025年に約20%減少したとされ、非常に強い供給制約が存在する。Prime価格は2025年に約5%上昇し、2026年にも約4.5%の上昇が予想されている。マドリードは現在の欧州でも最も成長力の高いプライム市場の一つと位置付けられる。マドリードの最大の魅力は、投資都市である以前に実際に住みたい都市である点である。海外富裕層だけでなくスペイン国内の富裕層需要もあるため、外国人だけに依存した不動産市場になりにくい。10年という期間なら、バランスの良い候補である。

第2位ミラノ

ミラノは非常に面白い。ファッション、デザイン、金融、現代美術、家具、料理といった文化産業が集積し、住居+ビジネス+文化の三つが成立している。英国の非居住者税制変更などを背景に、国際富裕層がイタリアへ移る流れも強い。ミラノのPrime価格は2022年の約€17,270/㎡から2025年には€22,000/㎡超へ約30%上昇した。既に安い市場ではないが、それでもロンドン・パリから富裕層資本が移動する受け皿として非常に有力である。狙うならBrera、Quadrilatero della Moda、Magenta、Porta Veneziaである。特にBreraは美術館、ギャラリー、石畳の街並み、飲食店が密集し、住宅地でありながら文化地区でもある。2026年7月時点の平均売出価格は約€13,161/㎡で、過去5年間では約21%上昇している。ただしミラノは既に再評価が相当進んでいるので、今後ロンドン・パリに近づいていく都市として考えるのが適切である。

第3位ウィーン

ウィーンは性格が異なる。急騰型ではなく、極めて長期間価値を保つ都市である。帝政時代の都市計画、音楽、美術館、オペラ、カフェ文化、公共交通、医療、治安、公園などを考えると、世界でも屈指の住環境である。中心部のInnere Stadt、Wieden、Josefstadt、Döblingなどは都市の完成度が非常に高い。ウィーンについて注意すべきなのは、住宅政策と賃貸規制が強く、単純な利回り投資には向かないことである。したがって賃貸収益を最大化する投資よりも、歴史地区の希少な区分所有住宅を長期保有する資産保全型投資の方が適している。10年後に振り返った時、派手な値上がり率ではマドリードやミラノに負けても、買っておいて良かったという可能性が非常に高い都市である。

第4位リスボン

リスボンは既に上昇したが、まだ物語は終わっていない。リスボンはこの10年間で大幅に値上がりしたため、もはや知られていない割安都市ではない。それでも国際的人気は強い。年間新築供給が約2,000戸しかなく、供給制約も強い。2026年のPrime価格は、Avenida da Liberdadeで約€15,000/㎡、Príncipe Real約€13,500/㎡、Chiado約€13,000/㎡である。ただし、ここからの10年についてはマドリードより一段評価を下げる。ポルトガルの経済規模が小さく、海外資本への依存度が高いからである。また住宅価格と地元所得との乖離が大きくなっている。したがってリスボンでは都市全体ではなく、Chiado、Príncipe Real、Lapa、Estrelaなど、本当に代替不能な地区に限定すべきである。

第5位ベルリン

ベルリンは、投資家から見ると極めて興味深い。世界都市としての文化力と不動産価格がまだ完全には一致していない。美術、音楽、スタートアップ、大学、研究機関、政治機能を考えれば欧州でも最高クラスだが、ロンドンやパリ、ミラノと比較すると住宅価格は相対的に低い。2026年上期のベルリンの平均マンション売出価格は約€5,800/㎡、新築でも約€8,140/㎡であり、5年間の累積上昇は約10%である。一方で賃貸市場への規制は非常に強く、賃料目的の投資には難しさがある。そのため狙うなら大量賃貸住宅ではなく、Mitte、Charlottenburg、Prenzlauer Bergなどの自己使用可能な良質物件である。ベルリンは10年間で化ける可能性がある都市である。ただし政治的な住宅規制リスクが大きいことには注意が必要である。

第6位プラハ

もう一つ、かなり注目したいのがプラハである。プラハは世界有数の歴史都市でありながら、西欧主要都市に比べれば依然として価格の絶対水準が低い。チェコ経済は中東欧の中では工業基盤が強く、ドイツ経済圏との結び付きも深い。観光都市だけではなく実際の経済都市でもあることが重要である。特にStaré Město、Malá Strana、Vinohradyなどは、歴史的景観の保護によって供給が事実上固定される。2024年のPrime住宅価格上昇率ではプラハは5.8%を記録している。10~20年という尺度なら、西欧との所得格差縮小と都市ブランド上昇の双方を享受できる可能性がある。

第7位コペンハーゲン

コペンハーゲンは投資収益だけを見ると突出してはいない。しかし、住環境という観点では極めて強い。自転車中心の都市設計、港湾再開発、北欧デザイン、レストラン文化、環境政策、教育、治安など、将来の都市生活モデルに近い。問題は外国人による住宅取得規制が厳しいことである。したがって誰にでも適した投資市場ではない。しかし制度上購入可能な立場にあり、長期居住も視野に入れるなら、資産として非常に魅力的である。

逆に慎重に見るべき都市

アムステルダム、バルセロナ、ダブリンは魅力的な都市ではあるが、現時点では順位を下げる。理由は価格そのものではなく、住宅不足が政治問題化し、外国人投資家や賃貸オーナーへの規制が強化されやすいためである。住宅不足は価格を押し上げる材料でもあるが、政治介入を招くところまで行くと、所有者側の収益性を低下させる。またアテネ、ブダペスト、ワルシャワは価格上昇余地という意味では面白いものの、政治、通貨、地政学、気候などを加味すると、資産保全目的では上記7都市より一段リスクが高い。

アジアの有望都市

アジアは欧州以上に面白い。欧州では歴史的中心部の希少性が価値の中心になるが、アジアではそれに加えて、人口・所得の増加、金融センター化、富裕層の域内移動が不動産価格を押し上げる。今後10年という視点なら、東京、ソウル、シンガポール、バンコク、ホーチミン、香港、クアラルンプールに注目する。

第1位東京

意外に思われるが、東京は最も再評価余地がある。円安によって、ニューヨーク、ロンドン、パリ、香港、シンガポールの富裕層から見ると東京の一等地は依然割安感がある。建設費と土地価格の上昇によって新築高級住宅の供給も容易には増えない。2026年のクロスボーダー不動産投資先として東京はアジア太平洋首位である。狙う場所は東京全体ではない。麻布台・虎ノ門・赤坂・六本木・青山・番町・広尾・白金である。従来の東京の住宅地というより、シンガポールやニューヨークと競争する国際富裕層居住区へ変わりつつある。東京の最大の強みは、治安、食、医療、公共交通、文化施設、巨大経済圏が同時に存在することである。10年後には東京中心部はなぜこれほど安かったのかと振り返る可能性すらある。

第2位ソウル

純粋な価格上昇力なら、現在最も強いのはソウルかもしれない。住宅供給不足と韓国国内富裕層、海外在住韓国人によるトロフィー住宅需要が背景である。注目すべきはHannam-dong、Cheongdam-dong、Apgujeong、Seongsu-dongである。特に漢南洞は、財閥一族、芸能人、外交関係者などが集まる韓国最高級住宅地として希少性が非常に高い。ただし東京よりリスクも大きい。地政学、住宅政策、住宅ローン規制など政府介入が比較的強い。

第3位シンガポール

資産保全という意味ならシンガポールは極めて強い。中国、インド、インドネシア、マレーシアなどアジアの富裕層が資産・家族・法人を移す場所として、シンガポールの地位はむしろ強くなっている。英語、法制度、教育、金融、治安、税制という組み合わせはアジアではほぼ代替不能である。注目地区はOrchard、Tanglin、River Valley、Bukit Timah、Marina Bayである。ただし大きな問題がある。外国人による住宅購入には極めて重い追加印紙税が課されるため、外国人個人が純粋な投資目的で買うには非常に不利である。したがって世界最高クラスの不動産市場であることと、日本人にとって買いやすい市場であることは別である。値上がり期待よりも、アジアの富裕層が逃避する安全資産都市という位置づけが正しい。

第4位バンコク

バンコクはかなり高く評価できる。特に欧州のマドリードに似た位置にある。巨大都市でありながら、東京、香港、シンガポールと比較すると高級住宅価格がまだかなり低い。高級ホテル、レストラン、国際病院、インターナショナルスクール、ショッピング、航空網がそろい、東南アジアの富裕層都市としての基盤はすでに完成している。狙うならLumphini、Wireless Road、Sukhumvit 24~39、Thonglor、Chao Phraya Riverfrontである。特にWireless RoadからLumphini Park周辺は、バンコクの中でも土地供給が限定され、今後東南アジアのCentral Park周辺のような価値を持つ可能性がある。ただし外国人は原則として土地を直接所有できず、コンドミニアムにも外国人持分制限がある。この制度的制約は必ず考慮すべきである。

第5位ホーチミン

10年間で最も大きく変貌する可能性があるのはホーチミンである。ベトナムはアジアの製造業移転、若い人口、所得上昇、外資流入の恩恵を受けている。特にDistrict 1、Thu Thiem、District 2旧Thao Dien地区には注目する。Thu Thiemは現在のDistrict 1対岸に計画された新CBDであり、今後10~20年という時間軸なら非常に面白い。ただし法制度、開発遅延、所有権、通貨などのリスクは東京やシンガポールとは比較にならないほど高い。したがってこれは安全資産ではなく都市成長に投資する市場である。

第6位香港

香港は一時期かなり悲観された。しかし逆張り的に見ると非常に興味深い。住宅価格は過去のピークから大きく調整した。一方で金融センター、低税率、中国本土との接続、英米法的商慣行、国際的人材という基盤が消滅した訳ではない。特にThe Peak、Mid-Levels、Repulse Bay、Kowloon Station周辺は希少性が高い。香港については、都市全体が再び成長するというより、世界的富裕層が求める本当の一等地だけが強くなる二極化である。

第7位クアラルンプール

クアラルンプールは上記都市とは少し性格が違う。都市の経済力や文化力では東京・シンガポールには及ばないが、高級住宅の㎡単価は非常に低く、住環境の割に価格が安い。注目はKLCC、Bukit Bintang、Bangsar、Mont Kiaraである。マレーシアは日本、シンガポール、オーストラリアと並ぶアジア太平洋の有力Lifestyle destinationとして評価される。ただし住宅供給が多くなりやすいため、クアラルンプールなら何でも上がるという市場ではない。本当に土地価値のある中心部に限定する必要がある。

世界の注目リゾート地

世界のリゾート不動産は、都市中心部とは違う論理で考える必要がある。今後10年では、単なる観光客数よりも、世界の富裕層が年に数週間訪れる場所から数か月暮らす第二の生活拠点へ変化するリゾートが強いと考えられる。プライベートジェットでのアクセス、医療・教育、食文化、自然環境、土地供給の制約、気候変動への耐性、外国人の所有権が重要になる。その観点から特に注目すべきは、マヨルカ、コート・ダジュール、コモ湖、アルガルヴェ、ドバイ、プーケット、バリ、北海道、ハワイである。

第1位マヨルカ島

欧州で最も注目するのはスペインのマヨルカである。イビサほど投機的ではなく、南仏ほど価格が完成しておらず、しかもパルマという歴史都市を島内に持っている。特にSon Vida、Port d’Andratx、Deià、Sóllerは面白い。海だけではなく、歴史、食、ヨット、ゴルフ、山岳景観、空港アクセスが揃う。更に欧州富裕層にとってドイツ、英国、スイスなどから短時間で到達できる。マヨルカの本質は夏の別荘地から欧州富裕層の第二居住地へ変化していることである。今後10年のリゾート不動産では非常に重要な変化である。

第2位コート・ダジュール

フレンチ・リビエラはすでに高い。しかし、Saint-Jean-Cap-Ferrat、Cap d’Antibes、Cannes、Saint-Tropezの最高級物件は高すぎるから上がらないとは考えない方がよい。特にCap-Ferratの海を望む大規模敷地付きヴィラなどは、新たに同等物を作ることがほぼ不可能である。これは投資というより、ピカソやモネの一級作品と同じ世界的希少資産に近い。世界の億万長者人口が増えれば、買い手は増えても土地は増えない。したがって10年で2倍になる場所を探す市場ではなく、50年後にも世界の富裕層が欲しがる不動産を所有する市場である。

第3位コモ湖

コモ湖は非常に興味深い。Bellagio、Cernobbio、Tremezzinaなどの歴史的ヴィラは供給が限られている。しかもミラノから近く、ミラノが欧州の富裕層・金融・ファッション・デザイン都市として更に成長すれば、その高級別荘地であるコモ湖も恩恵を受ける。コモ湖はLondon+CotswoldsNew York+Hamptonsに近い構造であり、非常に強い。

第4位アルガルヴェ

リスボン以上にリゾートとして注目したいのがAlgarveである。特にQuinta do Lago、Vale do Loboなどは、ゴルフ、ビーチ、治安、食、気候、英語環境という条件が整っている。英国人だけでなく北欧、ドイツ、フランス、米国の富裕層まで購入者層が広がれば、単なる英国人の避寒地から国際高級居住地域へ更に変化する可能性がある。ただし水不足と山火事を含む気候変動リスクは、10年以上保有するなら無視できない。

第5位プーケット

アジアのリゾートならPhuketをかなり高く評価する。特にKamala、Surin、Bang Tao、Cape Yamuなどである。香港、シンガポール、バンコクからアクセスしやすく、欧米人だけでなくアジア富裕層の需要を取り込める。高級ホテル、インターナショナルスクール、病院、マリーナ、レストランも発達している。ここでも重要なのは休暇で行くプーケットから数か月生活するプーケットへの変化である。ただしタイでは外国人の土地所有に大きな制約があるため、物件以上に所有スキームの法的安全性を見る必要がある。

第6位バリ

バリは、世界的な長期滞在型リゾートとして既に独特の地位を確立した。Canggu、Uluwatu、Seminyakなどは、観光客だけではなく起業家、クリエーター、デジタルノマド、富裕層の長期滞在地となっている。しかしプーケットより慎重に見る必要がある。過剰開発、交通渋滞、インフラ、所有権、環境問題があるからである。大きな値上がりを狙う投資対象にはなり得るが、資産保全という意味では南仏やコモ湖とは全く違うカテゴリーである。

第8位北海道

日本で最も注目するなら北海道である。ただしニセコを買えばよいという段階から次の局面へ入りつつある。Nisekoはすでに国際的価格形成が進んでいるため、倶知安・花園・ニセコからルスツ、富良野などへの面的拡大を見るべきである。北海道には大きな長期的テーマがある。アジアの所得上昇に加えて、温暖化が進めば涼しい夏を持つ北海道の価値が高まる可能性があるからである。東京を第一居住地、北海道を夏・冬の第二居住地とするアジア富裕層が増える可能性は十分ある。特に北海道は、雪だけではなく夏を売れるようになった時に不動産価値がもう一段変わる。

第9位ハワイ

Hawaiiはすでに成熟している。しかしHonoluluのKahala、Diamond Head、Kakaʻako、Mauiなどの本当の一等地には、太平洋地域の安全資産という性格がある。日本、米国本土、韓国、中国、台湾などから需要を集められる点も強い。問題は価格、維持費、税金、保険料、自然災害リスクである。したがって大幅なキャピタルゲインよりも太平洋の永久資産と考える方がよい。

産業と投資に関する考察

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